第十三話 自分の道
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だが、なかなか扉を開く事は出来なかった。
中にはセイバーが居るはずだ。
彼女は何と言うだろうか。
彼女を置いたまま、フィールドへ出て行った事を責めるであろうか。
生真面目な彼女の事だ。
小言の一つは覚悟しておいた方が良いかもしれない。
俺はそんな場違いな事を考えつつ、扉の前に立ち尽くしていた。
「キリト!!」
後方から俺を呼ぶ声がした。
振り向くと、俺から10メートル程離れた場所に声の主を発見した。
そこには、いつもよりも表情を硬くし、眉根を寄せていた蒼い騎士姫がいた。
恐らく、黙って出て行った俺を探していたのであろう。
息は切らしていないがわずかに肩が揺れている気がした。
彼女はその表情のまま黙って俺の元へと歩いてくる。
思わず顔を逸らす。
様々な罪悪感が胸の中を駆け巡る。
彼女は俺の目の前に立つと、見上げるような形で俺の顔を見つめた。
俺は彼女の顔を見れない。
彼女のまっすぐな視線が痛かった。
「キリト、私の顔を見てください」
セイバーはゆっくりとした、それでも毅然とした声で言った。
「……」
ゆっくりと、そして恐る恐る視線を上に挙げる。
そこには、やはり眉根を寄せてはいるが先程よりは少し表情が柔らかくなっていた彼女の顔があった。
彼女は俺の眼をじっと見つめ、そしておもむろに口を開いた。
「キリト、何か私に言う事はありませんか?」
「うっ……」
思わず口から呻きが漏れる。
やはり彼女の威圧感は半端じゃない。
たった一言で俺は彼女から視線を外す事が出来なくなってしまった。
しばらく見つめ合う俺達。
状況が状況なら恋人同士のも見えなくはないが、そんな雰囲気でもない。
視線が痛い。
「……」
「あ……」
今まで俺は勝手な行動を起こし、そして彼女に目を向ける事も無かった。
彼女に言わなければいけないこと。
「ごめん、セイバー」
俺はその一言を呟いた。
何に対してなのか、そんなの分からない。
でも俺は色んな意味を込めて彼女に頭を下げた。
「……」
「……」
しばらくの沈黙。
彼女は黙ったまま。
俺は頭だけを下げ、彼女の顔は見れない。
俺は恐る恐る顔を上げる。
直視はできないが、チラリと彼女の顔を見た。
そこには、さっきまでの険しい表情から、穏やかに変わった彼女の顔があった。
「中へ入りましょう。疲れたでしょう?」
彼女はそう言うと、俺の横を通り後方へと歩き始めた。
「あ……あの、セイバー……」
「そう言えば……」
彼女は俺の言葉にかぶせるように口を開き、
「何やら、以前より表情が少し穏やかになった気がす
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