第十三話 自分の道
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主、一人でこんな所でなぁにしとる?」
「……!」
思わず身構える。
この男は世間話をしているつもりだが、この男は、今信じられないことをしていた。
この男は今どうやって此処に来た。
空を飛ぶ戦車があってたまるか。
ならば考えられる事はただ一つ。
こいつもサーヴァントだ。
俺の警戒を見てか、男は顎鬚をなぞりながら笑みを浮かべた。
「まあ、そんなに警戒するな。儂もちょいと気紛れで夜の風景を見ようと出ていただけであっての。そしたらお前さんを見つけたわけよ」
何のつもりだ。
するとこの男は、辺りを再度ぐるりと見渡す。
周りの虎達は先ほどの襲撃で、1/3ほど戦闘不能になっていた。
だが、生きている奴らは急に現われた巨漢の男に敵意をむき出しにし、牙を剥いている。
男はそれを見てなおにやりと笑い、俺に向き直った。
「まあ、見た所お前さんも死にかけていたようじゃからの。見捨てるにも後味が悪い。」
何を言っている!?
こいつは俺を助けようと言うのか?
それはこいつにとって何のメリットもないはずだ。
なのに何故?
「坊主、お前はそこで見ておれ。此処に余の力、お前にも見せ付けてやろう」
何なんだこいつ?
もう訳が分からない。
「さあ、蹂躙せよ」
男はそう言うと、手綱を強く振り二頭の牛を走らせる。
「AAAAAAAAALALALALALALALALAei!!」
戦車は虎の群れへと突っ込んでゆく。
虎達は突如突っ込んできた戦車をかわそうと、体を回転させるが、
戦車はその凄まじい突進力と、撒き散らせる紫電により、次々と虎達を結晶へと変えて行った。
まさに蹂躙。
俺は目の前の男のあまりの規格外さに思わず身を固めてしまった。
セイバーも、あの虎達を倒すのにそこまで苦戦はしないだろう。
だが、今のレベルでは数で押されてセイバーも大立ち回りはし辛い。
風の斬撃を使っても、いくらか時間を要するであろう。
けれど目の前の男は、その圧倒的な破壊力を使い、ものの数分で虎達を全滅させていた。
伝説的な英雄達、サーヴァント。
俺はその一端をまざまざと見せつけられた。
「まぁ、ざっとこんなもんか。とりあえず一丁上がりといったところかの」
男は、戦車を旋回させると俺の側へと降りてきた。
「坊主、今一度問うが、お主こんな所で何一人で立ち尽くしておった。まるで死人のようであったぞ」
目の前の男は戦車の上から見下ろし、先ほどと同じ質問を俺に投げかける。
その男の威圧感は、戦闘を終えた今でも衰えていない。
俺は不思議とその場に座り込んでしまった。
俯きながら歯を食いしばる。
こんなにも……俺達の間には差があったのだ。
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