第二十九話 少年期K
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「はぁー、くしゅん」
「……なんだ、その気の抜けた感じは」
応接用のソファに項垂れるように座る俺に、書類をまとめる副官さんが胡散くさそうに言ってきた。目だけを向けてみると、今日も忙しそうに仕事をしている。おじいちゃんはただいま別件で席を外しているため、現在俺と副官さんの2人だけである。
「いやいや、これ結構画期的だと思いますよ。幸せを逃がしたくないけど、このやりきれない気持ちを発散させる方法を考えて15分。これ溜息じゃないよ、くしゃみなんだよ作戦を思いつきました」
「ごまかす必要あるのか、それ」
「個人的には」
「お前の頭がいつも通りお花畑なのはわかった」
俺も副官さんがいつも通り辛辣なのはわかった。いたいけな子どもが悩ましげにしているのに、きっぱりアホの子宣言しますか、この社会人は。でも俺を心配する副官さんを想像してみたら、なんか寒気がしたので黙っていることにしました。
「今ものすごく失礼なことを考えなかったか、お前」
……意外に勘が鋭いよな、この人。
副官さんから視線を外し、顔を天井に向ける。そのまま俺は手に持っていた資料を掲げ、もう一度目を通す。総司令官との取引をしてから2ヵ月の月日が流れている。少し前に引っ越し作業もすべて終わり、家の方もだいぶ落ち着いてきた感じだ。
「そういえば、こっちもだいぶ落ち着きましたね。前回はお祭りのような騒ぎでしたし」
「それ本気で言っているのか?」
「おじいちゃん企画『華麗なる地上部隊 パート2』がついに上映! だったのに、副官さんが阻止するために殴り込みに行ったりしていたじゃないですか」
おじいちゃんの趣味が爆発した結果だったりする。副官さんが文字通り走り回っていた。いきなり副官さんから緊急呼び出しされたときは何事かと思ったが、レインボーな上映を阻止せよ任務だぜ。……おじいちゃん側に何度寝返りたいと思ったことか。
「総司令官は地上部隊の宣伝になるって言っていたのに」
「俺が憤死するわ! 宣伝はいいが、なんで俺ばっかり撮影されているんだよ!」
「よくありますよ。孫の成長記録を収めたい保護者の映像なら」
「だから孫じゃない!!」
副官さん心の叫び。もういいじゃん、孫で。おじいちゃんは確実にサムズアップしていい笑顔を見せてくれるよ。ちなみに副官さんの全力を持って阻止されたその事件の後。その時の様子をまたしてもビデオに収めておいたらしい報告を秘密裏に教えてもらっている。『パート3』が放映される日も近いだろう。
そんな感じで、俺は地上部隊でなんだかんだと平和に過ごしている。
おじいちゃんからはこっちに来るのは家の方が片付いてからで大丈夫、と言われていたので、この2ヵ月の間にここに訪れた回数は今日を入れて3、4
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