第二十九話 少年期K
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「……え」
『ますたー?』
出てきたものに俺は正直言葉を失った。パッと見ただけでは、これが何なのかもわからない。俺の名前と写真が載っているIDカードのようなもの。それが空中のディスプレイに映る。
地球のようにカード型ではなく、電子式の証明書。そこには他にもたくさん細かなことが書かれていた。その記載された文面を読んでいくにつれ、これが何のためのものなのか理解していく。猫背のようになっていた身体も起き上がり、まじまじと見入ってしまっていた。
『この者の無限書庫への立ち入りを許可する』
『知りたいのなら、あとは自分の力で調べるんだな』
……まじでか。あの時カタカタしていたのってもしかしてこれ? 間違いなくこれは、世界の記憶を収めたと呼ばれる場所への立ち入り許可のパスだった。管理局が保有する世界の書籍やデータが全て収められた超巨大データベース『無限書庫』。原作で夜天の書の手掛かりを見つけられた場所。
副官さんがあの時の操作で発行してくれたのか、それとももともと発行されていたものを送ってくれたのかはわからない。もしかしたら、俺に送るのをずっと躊躇していたのかもしれない。それでも、こうして俺の手に届けてくれた。
「――ありがとうございます」
それがすごく……嬉しかった。
『無限書庫ですか……、どんなところなのでしょう』
「うーん、載っていた住所によると本局の方にあるみたい。確か本がめちゃくちゃあって、無重力空間だったような気がする」
『そうなのですか?』
コーラルの声に確かね、と肯定しながら、ごろりとまた転がってパスを眺める。見ていると顔がにやけてしまう。これでまた1歩前に進められると気持ちが高揚する。
それに無限書庫は、リリカル世界で俺が行ってみたいとずっと思っていた場所でもある。本を読むのは結構好きだし、宇宙空間も体験できる。確かすごく広いはずだから、探検もできそうだ。ユーノさん曰く、調べたらちゃんと出てくると言っていたぐらいの宝の山らしい。なんだかわくわくしてしまう。
その後、結局興奮で眠れず、母さんからの晩御飯ができた声が聞こえてくるまでごろごろしてしまった。それに返事を返し、俺は扉へと真っ直ぐに向かった。
……とりあえず、感謝のしるしにおじいちゃんから密かにダビングしてもらっていた『華麗なる地上部隊 パート3』は1回見させてもらったら封印しようと思う。本人曰く憤死ものだったらしいので。
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