第二十九話 少年期K
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な自分にはなりたくない。だから、せめてこの思いだけでもしっかり伝えよう。
「俺も自分の考えが結構複雑で、説明が難しいです。でも、やっぱり最終的には自分のためなんだろうなって思いました」
もともと俺は、自分が楽観的でマイペースな人間なんだってわかっている。こっちに来て色々考えるようにはなったけど、基本俺は難しく考えるのが苦手なんだ。
彼女を安心させてあげたい。恩返しをしたい。助けてあげたい。言葉は色々あるけど、なんとなくこれらを口に出すのは違う気がした。そして出てきたのは自分のため。俺は笑っているのが好きで、周りも笑ってくれると嬉しいし、楽しい気分になる。幸せそうに微笑んでいる人を見たら、こっちもあたたかい気持ちになる。単純明快な思考回路。
「叶えたいと思ったんです。みんなが笑いあえる未来っていうそんな可能性を俺が見たいんだって。だから自分にできることを頑張ろうと思いました」
やっぱり俺はハッピーエンドが見たい。アリシアがいて、母さんがいて。なのはさんとはやてさんが原作と違う未来で幸せになれるのかはわからないけど、それでも笑っていてくれたら嬉しい。そんな先を俺は目指したいと思った。
「ロストロギアを調べたら、みんなが幸せになる? 頭大丈夫か」
「副官さんの貴重な心配シーンが俺の頭の中ですか。いや、まぁ文章の繋がりが意味不明なのは確かなんですけど……」
「別に、答えなくてもいいと言ったのは俺だ。とりあえず、余計にわけがわからなくなったのはわかった」
いやぁ、本当にすいません。へらりと笑ってみせると、ジトッとねめつけられる。その後副官さんは俺から視線を外し、少し考えるように床に目を落とす。それに首をひねる俺の目の前で、端末のディスプレイを空中に浮かび上がらせた。
そのまま素早く指を動かし、何か作業を始める。仕事か何かだろうか、とその様子を見つめる俺。声はかけづらかったので、静かに眺めて待つことにした。
「以前総司令官から、自分の目で見て、考えろと言われたことがある」
「え? あ、はい」
「結局わけがわからないのは変わらなかった。白か黒かも判断が未だにわからないのも同じだ。そのまま中途半端にすることを俺は好きではないが、そういうおかしな生き物も世の中にはいるのだと思えば納得はできる」
……今ものすごく失礼なことを言われた気がする。
「俺からはもう何も聞かない。だが、見ることや考えることをやめるつもりはない」
そこまで言って副官さんは作業をしていた手を止める。結局何をしていたのかはわからないまま、ディスプレイも消去された。事務仕事が多いからか、すげぇ高速指使いと感心しながら見ていたんだけどな。
副官さんはソファから立ち上がると、机に置いてあった書類の束を片腕で抱き
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