第二十九話 少年期K
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ただ知っているというのも、少々面倒な側面があるとも俺は思っている。
俺はこの情報が間違っている、彼らはちゃんと生きているんだって伝えたい気持ちを持ってしまった。リインさんの思いやヴォルケンリッター達の覚悟を知っているから。はやてさんが与えた命の息吹が、確かに芽吹くのを知っているから。
だからこの資料に違和感を、憤りを感じてしまう。お前は彼らの何を知っているんだって。闇の書が夜天の書であることも知らない。リインさんの悲しみも、ヴォルケンリッター達にも感情があることを知らないくせにって。
そこまで思って、……俺は自分に自嘲する。俺こそ彼らの何を知っているんだって。
直接会ったことも、話したこともないただの知識として知っているだけなのに。この資料を書いた人だって嘘を書こうと思って書いたわけじゃない。これもまた真実なのだ。お前に何がわかる、と反論されたら俺は何も言い返せない。「でも――」の先の言葉を飲み込むしかない。
本当に、知っているというのは……時に面倒だ。
「どういうことだ」
「あはは、つまらないことです。なんでもないので気にしないで下さい」
副官さんの追及に俺は曖昧に笑って見せる。それに一瞬睨まれたが、俺に応える気がないことを理解するとまた書類に視線を戻した。取引をしてからというもの、副官さんがこちらを探ろうとしていることに気づいていた。俺自身も言葉には気を付けないと。
******
俺は一度頭を横に振って、それまでの気持ちを切り替えるようにする。少なくとも今考えてもどうしようもないことは事実だ。なら堅実な方を考える方がいいに決まっている。
管理局のデータベースでは、俺が知りたいことを知ることはできない。ならば当初の予定通りあの場所に行くしかないのだろう。だけど一般人は本来入れない場所なので、申請や立ち入りのためのパスを作成するなど手続きが必要らしい。総司令官からはできるまで時間がかかると言われていたが、まだできないのだろうか。
「あの、副官さん。立ち入りの申請はまだ時間がかかるんでしょうか」
「そこまで急ぐ必要があるのか」
「あー、急ぐ必要性はないんですけど、ちょっと落ち着かないだけです」
急ぐ必要性はあまりなく、時間ならかなりある方だと思う。でも、気持ちがどこか急いてしまうのだ。たぶんそれは、実際に俺がまだ何もしていないからだろう。少しでも進展があれば、この手持無沙汰な状態がなくなればいいと考えてしまう。
俺は指で頬を掻きながら、焦っているのかなぁと自問する。家族と一緒にいるときや友達と遊ぶときなどは余裕を持っていられる。だけど1人になったり、空いた時間ができると考え込んでしまう。これからのことが未だ手付かずなのが、不安を生んでしま
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