第一章
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剣客
フランス王アンリ三世の周りにはだ。側近達がいつも侍っていた。
どの王にも側近はいるものだが彼等は少し違っていた。見ればだ。
どの者達も美青年であり髪型にも凝りだ。そこにオレンジ色の粉をかけてその髪をさらに目立つ様にしていた。
服は豪奢というよりは奇抜なものだった。やけに大きい白いカラーが襟巻きの様になっている。それに身体にフィットした派手な刺繍が入った上着にズボン、若しくはタイツだ。
その彼等を常に侍らす王は満足した面持ちでこう言うのだった。
「余の剣達だ」
この彼等を常に傍に置きだ。王は日々を過ごしていた。
しかしその彼等を見てだ。閣僚や高位の貴族達は王に常に言うのだった。
「陛下、あの者達ですが」
「あまり傍に置かれぬ方がいいです」
「国庫を浪費しています」
これが彼等が問題にしているところだった。彼等は王と共に遊びだ。そのうえでだ。
国庫を浪費していたのだ。それで王にいつも言うのだ。
「ですからどうかです」
「あまり彼等を寵愛されぬ様」
「お願い申し上げます」
こう王に嘆願する。しかしだ。
王はその細く髭の薄い青ざめた感じの顔でだ。こう彼等に返すだけだった。
「それはできない」
「何故ですか、それは」
「今は浪費を少しでも抑えるべきですが」
「それでもなのですか」
フランスはこの時困難な状況にあった。国内では旧教徒と新教徒の対立が続いていた。それは血と血を洗う凄惨なものとなっていた。所謂ユグノー戦争である。
この内乱を収める為には軍とそれを支える予算が必要だった。それでなのだ。
彼等は何とか浪費を抑えようとしていた。しかし王はだ。
その彼等にだ。こう言うばかりだった。
「いいではないか。彼等は私の忠臣だ」
「だからなのですか」
「あの者達を放っておくのですか」
「好きにさせてやれ」
彼等をだ。明らかに擁護する程だった。
「余を愛し護ってくれる者達だからだ」
「しかし彼等はです」
「それでもです」
「あの者達はです」
くれぐれといった口調でだ。彼等はまた王に言うのだった。
「浪費だけでなくいらぬいざかいも起こします」
「そうして刃傷沙汰は日常茶飯事です」
「宮廷の規律も乱しています」
「それでもなのですか」
「余は言った」
王としてだ。反論を許さない言葉だった。
「あの者達については何も言わせはしない」
「左様ですか」
「そう仰るのですか」
「卿等にわかるだろうか」
意見を封じてからだ。あらためて彼等に言ったのである。
「自分を心から愛し忠誠を誓う者がいることの有り難さが」
「我等もそうですが」
「それでもなのですか」
「どうだろうか」
彼等の自身への愛情
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