第一章 土くれのフーケ
第六話 “虚無”と“ガンダールヴ”
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のことを伝えないかと思いまして。あなたなら“虚無”の魔法についても何かしら知っているはず? ならば何故、魔法が使えず辛い目にあっていたルイズにアドバイスの一つもしなかったのか……」
「…………………………」
士郎の言葉にオスマン氏は眉をひそめると、深い溜め息をつき、長い沈黙を経て口を開いた。
「……“虚無”の力は絶大じゃ。下手に教えれば余計な騒動に巻き込まれてしまうでな。それならばいっそ、このまま何も教えずに魔法の使えない貴族とした方が良いのではと思っての。……お主ならば分かるのではないかの?」
オスマン氏の憮然とした態度に士郎は苦笑を更に深くした。
「確かにあなたの言うことも分かります。ですが、本人の預かり知らぬところで人生を勝手に決められるのはどうかと。例えそれが善意でも、です。……まあ、とは言え、その気持ちは本当に分かりますよ」
自嘲するような士郎の口調に、オスマン氏は水ギセルを苛立たし気に机に叩きつけた。
「それが分かるのならば何故じゃ。お主こそ本当に分かっておるのか? “虚無”の魔法がどれだけの争いを引き起こすか……それにミス・ヴァリエールが巻き込まれるのじゃぞ」
「“虚無”の魔法が争いを引き起こす……だからルイズに“虚無”の魔法について教えない。それは分かります。ですが、特別な力は特別な力を呼ぶものです。たとえあなたがルイズに『虚無』の魔法を教えなくとも、ルイズが『虚無』の担い手であるかぎり、いずれ争いに巻き込まれます」
オスマン氏の激昂を受けた士郎は、拳を握り締めながら、どこか悲しげに告げる。
「つまり、お主はわしの判断が誤っていると言いたいのかの?」
「別にそうは言っていません。ただ、最初から決め付けるのはどうかと言っているだけですよ」
批難めいたオスマン氏の声に、士郎はぽりぽりと頬を掻きながら肩を竦めた。
「無闇に教えるのもどうかと思いますが、同時に何も教えないと言うのも問題と思いますよ」
苦笑を浮かべる士郎の目の奥に悲しげな色を見たオスマン氏は、何かを感じたのか、向けていた批難めいた視線を若干緩めた。
「最低限必要な知識は与えろとお主は言っておるのか」
「そう、ですね。時期が来れば、ですが」
士郎の言葉は予想外だったのか、オスマン氏は意外そうな顔をした。
「すぐに教えるべきだと言うと思ったのじゃがな」
髭をしごきながら言うオスマン氏に、士郎は首を左右に振って見せる。
「流石にそんな事は言いませんよ」
「では、お主は何時が良いと思っているのかの?」
「それは……分かりません」
士郎は首を振りながら答えた。
「分からない?」
「ただ今は、伝えるべき時に多くのことを教えられるよう“虚無”について調べる時だと
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