第六章
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「これがな」
「ふうん。それで俺達から買ってか」
「高い給料出してくれて雇ってくれて」
「しかも技術援助までしてくれてか」
「そこまでして食うんだな」
その海栗や海鼠をだというのだ。
「全く。どうなんだよ」
「まあ俺達にとっちゃいい話だけれど」
「食わないもんをわざわざ買ってくれてるんだからな」
「売りものにならなかったものをな」
「じゃあいいか」
「悪い話じゃないからな」
彼等にとって悪い話ではない。それならだった。
奇妙に思うがそれでもよしとした。その中でだ。
仲間のうちの一人がだ。ロベルト達にこんなことを話したのだった。
「で、他の村じゃヒラメじゃなくて鮪を獲ることもはじめたってよ」
「鮪?」
「あのでかい魚か?」
「ああ、やっぱり日本人が食うんだってよ」
ここでも日本人だった。
「それで猫の餌も鮪から作るらしいな」
「おいおい、また猫かよ」
「日本人と猫かよ」
「そうだよ。猫缶もな」
それもだというのだ。
「鮪から作るらしいな」
「今度は鮪か」
「ヒラメだけじゃないのかよ」
「みたいだな。で、その漁村じゃ遠洋漁業の船と技術が提供されたらしいな」
無論日本からだ。そうしたことには実に余念のない国と国民だとだ。フィリピン人の彼等も思った。
「それではじめるらしいな」
「そうか。それでか」
「その村じゃ鮪か」
「わざわざ遠くまで出て獲ってか」
「それで日本人と猫が食うんだな」
彼等もその話を聞いて頷く。しかしだった。
鮪と聞いてだ。彼等は首を捻ってこう話すのだった。
「あんなでかいだけの魚美味いのかね」
「ヒラメといい鮪といいな」
「海栗も海鼠もな」
「日本人の食うものって何だよ」
「変なものばかりだな」
彼等はあらためてこのことを認識だった。鮪までと聞いてだ。
「わざわざフィリピンまで来て俺達から買ってまでして食うなんてな」
「そこまで魚とか好きなのか?」
「それも変なもんを食うのが」
「わからない奴等だな」
「全くだよ」
どうしてそんなものを好んで食うのかだ。彼等はどうしても理解できなかった。まだ猫の餌にするのならわかるがそれが人間となるとだった。
だが、だ。やはり結論は決まっていた。その結論は。
「まあ俺達にとっちゃ飯の種になるからな」
「儲けさせてもらうしな」
「じゃあいいか」
「ああ、そうだな」
「喜んで養殖させて獲らせてもらうか」
これだった。彼等が食べないもので儲けるのだから悪い話の筈がなかった。それでだ。
ロベルトもだ。こう言うのだった。
「じゃあ今日も頑張ってその日本人と猫が食うもの増やすか」
「ああ、俺達の飯の為に」
「頑張ってな」
漁師仲間達もだ。笑顔でだ。ロベルトの言葉に頷いてだ。
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