第三章
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「ですがそれでもです」
「あんた達は食わないのかい?」
「ここで養殖させてもらうヒラメは猫の餌なのです」
「猫!?」
「はい、猫のです」
その為に養殖するというのだ。そのヒラメをだ。
「猫の餌用のヒラメを養殖させてもらいます」
「おいおい、猫の餌なんて普通にあるだろうに」
「そのヒラメをキャットフードにします」
「キャットフード?ああ、あれか」
ロベルトもそれは知っていた。近所の店に売っている。彼にしてみればどうでもいい、彼にとってはヒラメもそうだがそうした魚を餌にするからそんなものはどうでもいいと思っていた。
そのキャットフードにだ。ヒラメをするというのだ。これは彼には理解できなかった。
「何だよ、ヒラメをそうして猫の餌にするのかよ」
「その通りです」
「あんた達にとって御馳走だよな、ヒラメは」
「私も大好きです。美味しいですよ」
「まあそれもわからないんだけれどな」
フィリピン人の彼にとってはだ。
「それ以上に猫に食わせる為にわざわざキャットフードにしてか」
「そうして売ります」
「わからねえことだらけだな」
しきりに首を捻って言うロベルトだった。そしてそれはだ。
他の漁師達も同じでだ。彼等も顔を見合わせて話す。
「あんな平たい魚美味いのか?」
「さあ、日本人は食うんだろ?」
「けれどそのヒラメってのをわざわざ養殖して猫の餌にする?」
「わかんねえよな、これって」
「訳わからねえな」
「日本人もおかしなことするよな」
「全くだよ」
彼等もこう話す。しかしだ。
綱元はその彼等にだ。こう話すのだった。
「まあとにかくわし等にとってもいい話だよ」
「養殖でも収入ができるからですか」
「それでなんですか」
「そうだ。じゃあこれからはそれもやるからな」
「とりあえず儲かるんならいいですけれどね」
「それなら」
漁師達もそれならと断ることもなかった。こうして彼等は八神の指導の下で養殖をはじめた。八神は丁寧かつ親切に彼等に養殖の仕方を教えた。彼はタガログ語も堪能でフィリピン文化にも通じていた。漁師達、ロベルトも含めて彼等にはいい仕事仲間になっていた。
しかしどうしてもだ。彼等は理解できなかった。そのヒラメのことがだ。
水槽の中のヒラメ達、ぴくりとも動かないその魚を見てだ。そして言うのだった。
「どう見てもなあ」
「ああ、美味そうに見えないよな」
「こんなの本当に猫の餌だろ」
「俺もそうしてるよ。どうでもいい魚だろ」
「それをわざわざ養殖までしてな」
「で、キャットフードにして売るって」
「日本人もわからねえな」
養殖するその魚を見てだ。それで言うことだった。
「まあ金払いはいいしな」
「俺達にとっても悪い話じゃないしな」
「漁ってのはあまり獲れ
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