第一章
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笑顔が見たくて
お母さんはです。ある日麗にこう言ったのでした。
「ねえ、麗ちゃんは何が欲しいのかしら」
「私が欲しいもの?」
まだ小さい、幼稚園にも入っていない麗はです。
お母さんに言われてです。少しきょとんとした顔になりました。
そうして少し考えてからです。こうお母さんに答えました。
「私ね、笑顔が欲しいの」
「笑顔が?」
「そう。最近お父さんずっと笑ってないから」
お仕事が忙しくてです。いつも疲れた顔をしているのです。
そのお父さんの顔を思い出しながらです。麗は言うのでした。
「お店忙しいの?うちのお店」
「少しね。今はね」
実際にそうだと答えるお母さんでした。麗のお家は散髪屋さんです。最近お客さんがとても多くてです。お父さんだけでなくお母さんも大忙しなのです。
特にです。お父さんはなのです。
「お客さんが多くて」
「だから。お父さんの笑顔が見たいの」
「そうなのね。麗ちゃんはお父さんの笑顔ね」
「お母さんは何が欲しいの?」
「そうね。お母さんはね」
娘に問い返されてです。お母さんはです。
考えてからです。こう麗に言うのでした。
「同じかな。麗ちゃんと」
「私と?」
「確かにお父さん今とても忙しいわよね」
「そしてずっと笑ってないから」
「じゃあお母さんもね。お父さんの笑顔が見たいわ」
微笑んで、です。麗に言います。
「麗ちゃんと一緒にね」
「じゃあどうしたらいいの?」
麗はあらためてお母さんに尋ねます。
「私もお母さんも」
「そうね。まずはね」
「まずは?」
「もう少ししたら忙しいのも収まると思うから」
それからだというのです。
「それまでの間にね。麗ちゃんはね」
「私は?」
「絵を描いてくれるかしら」
こう娘に頼んだのです。
「麗ちゃんと。お父さんとお母さんの絵をね」
「それを描いたらいいの?」
「そう。笑ってる絵をね」
三人がです。そうなっている絵をだというのです。
「描いて欲しいの」
「それでいいの?」
麗はお母さんに確認しました。それでいいのかと。
「私が絵を描くだけで」
「そのかわりにね」
どうかというのです。娘に対して。
「いいわね。笑顔よ」
「笑顔を描くの?」
「そう、お父さんもお母さんも麗ちゃんもね」
「三人共笑顔の絵をなの」
「それを描いてね」
これがお母さんが麗に言うことでした。
「いいわね。そうしてね」
「うん、わかったわ」
麗はお母さんのその言葉に頷きました。そうしてです。
自分のクレヨンで画用紙に家族の絵を描くのでした。色々な色を使って。
そうしてお父さんはです。やっとお家のお仕事が落ち着いてきまし
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