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消えたソウルフード
第八章
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「ニューオーリンズとロスの違いじゃないね。もう黒人でも若い子は知らないんだね」
「アフリカ系な。けれど知らないのは」
「豊かになって。ソウルフード以外のものも食える様になったからだね」
「ハンバーガーとかホットドッグとかな」
「そっちだね。うちの店でもこうしたメニューは若い子は知らなくて見向きもしなくて」
 老婆がここにはいない夫と共に経営しているこの店でもだというのだ。
「常連の白人の兄ちゃんなんてティーボーンステーキ一本だしね」
「それとバーボンだな」
「そうだよ。本当に皆ソウルフードなんて知らないし見向きもしないよ」
 老婆はこのことが残念そうだった。しかしだ。
 ブライアンはだ。老婆にこう言ったのだった。
「けれど美味いからな」
「それを認めるんだね」
「ああ、ちょっとやってみる」
 店のこと、老婆の知らないことをだ。ここで言ったのだった。
「そういうことでな」
「何かわからないけれどやってみるんだね」
「ああ、そういうことでな」
 こうした話をしてだった。ブライアンはだ。
 キャシーと共に勘定を済ませて店を出てだ。早速だった。
 自分でソウルフードについて調べてみてそのうえでだ。
 作ってみてキャシーや店員達、会社の上の方にまで試食してもらいだ。味の現代化や調理の営業販売に向けた改善等を経てだ。そうしてだった。
 店にそのソウルフード達を出してみた。するとだ。
 全く新しい料理、宣伝ではアメリカの懐かしい味と宣伝していたがそれでもだった。
 若い客にはそう言われてだ。そのうえで好評だった。
 このことでブライアンの社内での評価もあがり雇われ店長から本社の重役にまで抜擢されることになった。しかもグループ全体の売り上げもかなりあがり収益も店も増えた。
 彼にとってはいいこと尽くめだった。それでだ。
 正式に結婚したキャシーにだ。新宅でこう話したのだった。
「俺にとっちゃいいこと尽くめだけれどな」
「アメリカ料理も見つかったし出世もできたしね」
「ああ、本当にいいこと尽くめだよ」
 だが、だ。それでもだといった顔で言う彼だった。
「それでもあれだな」
「ソウルフードのことね」
「本当に知らなかったからな、俺」
「私もよ」
「あの婆さんはそれがかえって不思議だって言ってたけれどな」
 二人にそのソウルフードを教えただ。その老婆のことも話すのだった。
「いや、それもな」
「信じられなかったわよね」
「人間忘れるものなんだな」
 ブライアンの口調はしみじみとしたものになった。
「少し食わないとな」
「みたいね。それがね」
「驚いたよ、本当に」
 そのことを知ってだというのだ。
「忘れられるんだな」
「アフリカ系の昔の料理っていうけれど」
「本当に知らなかったな」

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