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消えたソウルフード
第八章
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「全くね」
 二人でしみじみと言う。朝食の仕事前にテーブルを囲んで。ハムエッグにソーセージ、サラダ、それにパンというアメリカの標準的な朝食である。量は多いが。
「アメリカにも料理はあるけれどな」
「それでも。少し食べないとね」
「忘れるな」
「そういうものなのね」
 アフリカ系も豊かになった。そうなれば過去の貧しかった頃の食べ物は忘れてしまうというのだ。例えそれが美味く愛着のある筈の料理でもだ。
 二人は今そのことを噛み締めていた。そしてだ。
 ブライアンはだ。あらためてキャシーに言った。
「それでな。今晩もな」
「ええ、今晩もね」
「ソウルフード食うか」
「わたしが作るわね」
 キャシーからこうブライアンに言ってきた。
「だから楽しみに待っていてね」
「ああ、じゃあそうさせてもらうわ」
「美味しいの作るから」
 こう笑顔で言うキャシーだった。
「楽しみにしててね」
「ああ。じゃあ夜にな」
 ブライアンも笑顔で応える。そうしてだ。
 彼は職場に行きソウルフードの売り上げと展望の話をした。それは好調でこれからも延びることが予想された。彼が見つけ出した懐かしいアメリカの味が。


消えたソウルフード   完


                           2012・1・25
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