第四章
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「言うこともできないわね。本当にどうしたものかしら」
「少年愛に走る夫を持つ妻の気持ちですね」
「それですね、まさに」
「それよ。その気持ちが今わかったわ」
素直に怒れない、そして言えない。その妙に歯痒い感情をだ。ヘラは今知った。
それでだ。困った顔で述べるのだった。
「仕方ないわ。今はね」
「それではあの少年にもですか」
「何もですね」
「睨むことさえできないわ。何をしていいか本当にわからないわ」
こう言ってだ。ヘラはその困惑し微妙な顔になったその顔でだった。その場を去るのだった。その後に従う女神達もだ。どうにも釈然としない様子だった。
その彼女達を見てだ。ガニュメデスを傍に置いて抱き締めているゼウスは得意満面だった。そのうえで傍に控えているヘルメスに言うのだった。
「勝ったか?わしは」
「勝ったといいますか」
「それとはまた違うか」
「新しい愛に入られたのでしょう」
それだとだ。ヘルメスはゼウスに話すのだった。
「そうなったのです」
「前にも男は愛してきたがな」
「ですがそれでもです」
「あらためて入ったということか」
「はい、そうだと思いますが」
「そうか。ではだ」
ゼウスはヘルメスの言葉を聞いてだ。そのうえでだ。
彼にだ。ガニュメデスを抱き締めたまま言う。見ればガニュメデスの方もまんざらではない感じでだ。ゼウスに己の身体を完全に預けて微笑んでいる。
その彼を抱いたままだ。ゼウスの言う言葉は。
「愛とは一つだけではないな」
「女に対する愛もあればです」
「こうした男に対する愛もあるな」
「そしてヘラ様が何も言えない愛もまた」
女に対するものではない、だからそうなるのだった。
「ゼウス様は以前から男も愛されてきたのは確かですが」
「本格的には入っていなかったか」
「しかし今です」
入った。そうだったというのだ。
「そうなります」
「そうなのだな。ではだ」
ゼウスはヘルメスの話をここまで聞いてからだ。
そのうえでだ。ガニュメデスに顔を向けてだ。こう言ったのだった。
「では今からまたな」
「お部屋にですね」
「共に行こう。そしてだ」
「私にゼウス様のお情けをですか」
「是非与えさせてくれ」
微笑んでガニュメデスに話してだった。
「そして愛をだ」
「愛を」
「私にくれるだろうか」
愛は受けるというのだった。そしてだ。
「愛は同性でもあり。そして」
「そして?」
「一方が与えるものではないのだからな」
「では私もゼウス様にですか」
「このことについては神もニンフも人も同じなのだ」
多くの女を愛してきたゼウスならではの言葉だ。それだけによく知っているのだった。
「互いに与え合うものなのだ」
「とはいっても」
そのゼウス
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