第一章
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少年と雷神
ゼウスはこの時非常に困っていた。何故かというと。
その理由をだ。息子の一人であり腹心であるヘルメスにだ。オリンポスの宮殿の中の彼の個室で二人だけになった時にだ。向かい合って座りこう話したのである。
「わしの浮気がな」
「あまりにも多くですか」
「それであいつが怒ったのだ」
彼の正妻であるヘラがだ。ゼウスの浮気に怒髪天になったのだ。今回もだ。
そのことをだ。彼はヘルメスに言うのである。
「それで暫くの間だ」
「暫くですか」
「そうだ、女に手を出せそうにもない」
ほとぼりが冷めればまた、と言うところがゼウスだった。
その茶色の髪と髭に覆われた威厳のある顔でだ。彼はヘルメスに話していく。
「困ったことだ」
「女神にもですか」
「勿論だ」
ゼウスは多くの女神との間にも子供をもうけている。それこそ何人もだ。
そしてだ。さらにだった。
「ニンフ達とも駄目でだ」
「人間の女は?」
「当然無理だ」
とにかく相手が誰でも手を出す、それがゼウスだ。
それでだ。ニンフも人間もだ。女ならばだというのだ。
「わしが近寄ればそれでだ」
「ヘラ様がお怒りになるのですか」
「その通りだ。今度は何をしてくるかわからぬ」
その怒り故にだというのだ。
「それこそこのオリンポスを破壊しかねん」
「ううむ、そこまでお怒りだとは」
ヘルメスもその話を聞いてだ。流石にだ。
深刻な顔になりだ。こうゼウスに言ったのだった。
「これは本当に女には手は出せませんね」
「暫くはな。しかしだ」
「しかし?」
「それではどうなのだ」
ヘルメスより遥かに深刻な顔になり述べるゼウスだった。
「わしは生きている喜びがない」
「女を愛することができないと」
「生きることとは何だ」
ゼウスは腹心であり我が子であるヘルメスを右手の人差し指で指し示してから言った。
「それは何の為だ」
「女を愛する為ですね」
「そうだ。それだ」
「では」
「わしは死ぬ」
実際に今にも死にそうな顔になっているゼウスだった。
「そうなってしまうぞ」
「どうしても我慢できませんか」
「できるものではない」
今度はこう言う。いささか以上にムキになっている。
「わしは食べることや飲むことにはある程度我慢できるがだ」
「しかし愛さねば」
「駄目だ。わしはヘラだけでは足りないのだ」
「しかし暫く女はです」
ヘラがそこまで怒っているとなるとだ。ヘルメスもだ。
いつもの様にゼウスの案内役なぞできない。しかしそれと共にゼウスが我慢できないこともわかっていた。腹心だけに彼の性格はよくわかっていたのだ。
それでだ。彼は。
その利発な顔をすぐに明るくさせてだ
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