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第二章
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「セリーグは広島だ」
「そうよね。だから巨人はね」
「御前もだろ。東京生まれでもな」
「西武よ」
 美和子の贔屓はそこだった。
「お父さんもお母さんも巨人が嫌いだったから」
「だからだ。俺は幸男にも香苗にも巨人だけは応援するなと教えてきた」
「この北海道でもね」
 雄樹も美和子も社内恋愛から結婚した。就職の時にこの北海道の企業に入ったのだ。それで今も北海道暮らしなのだ。
 その彼がだ。言うのである。
「まああれだ。北海道ではできなかったことをな」
「それをするのね」
「会社でな。そうしてくる」
 こう話してだった。彼はだ。
 定年のその日を迎えた。その日はだ。
 花束を貰いだ。お別れのパーティーを開いてもらった。カラオケボックスで営業部全員が参加してだ。ジンギスカン鍋に鮭やイクラ、海老に烏賊をふんだんに使った料理を前にしていた。そういったものを前にしてだ。
 雄樹はだ。上座においてだ。こう言ったのである。
「皆俺の生まれは知ってるよな」
「はい、広島ですよね」
「広島生まれですよね」
「そうだ、広島だ」
 まさにそこだとだ。彼は言うのだった。
 そしてだ。営業部の面々、カラオケボックスのパーティー用の広い一室で御馳走にビールを囲む面々にだ。こう言ったのである。
「だからだ。今日は我儘を言わせてもらう」
「広島だから?」
「それでなんですか」
「まずはビールじゃなくてな」
 札幌ビール、まずはそれを否定してだった。
「酒を持って来てくれ。日本酒をだ」
「日本酒?」
「それですか」
「そうだ、それだ」
 まずはそれだった。
「とはいっても広島の酒じゃなくていいけれどな」
「いや、広島の酒もありますよ」
「この店ちゃんとありますから、そっちの酒も」
「下の居酒屋と同じ経営者ですから」
 都合のいいことにだ。そうだというのだ。
「ですから頼めますけれど」
「わかった。ではそれだ」
 広島の酒が飲めると聞いてだ。実に楽しそうな笑顔になって言う彼だった。
「それだ。広島の酒だ、それにな」
「それに?」
「まだあるんですか?」
「牡蠣だ」
 次に言ったのはこれだった。牡蠣だった。
「牡蠣くれ、それもどっさりとな」
「牡蠣ですか、広島の」
「それをなんですか」
「そうだ、広島だからな」
 まさにそれをだというのだ。
「牡蠣くれ、北海道では牡蠣はあまり食べないだろ」
「まあ。鮭に烏賊ですね」
「イクラに海老」
「あとこれですし」
 見れば蟹もあった。鰯もある。海の幸は豊富だ。しかしなのだ。
 牡蠣がない。彼はそのことがずっと不満だったのだ。それで言うのである。
「牡蠣もくれ。居酒屋ならあるな」
「ああ、メニューにありますよ」
「生牡蠣に牡蠣フライ」
「まあ定
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