第三章
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パンチパーマの若手井本隆に僅か二十歳の抑え山口哲治が活躍し阪急打線を抑えた。近鉄にも山口が入りだ。その彼が阪急の反撃を絶ったのである。
そして打線も好調だった。若手に加えてだ。
助っ人であるチャーリー=マニエルがいた。彼が中心になり打ちだ。
阪急を破ったのだ。しかしだ。
第一戦に勝ってもだ。西本はまだだ。勝ったとは思っていなかった。
「まだ一勝や」
「はい、まだですね」
「あと二勝しないといけませんね」
「そや。前もそやったな」
昭和五十年のプレーオフの話をだ。ここでするのだった。
「第二戦で山口が出てやったな」
「あいつですか」
「あのピッチャーがですか」
「出て来るんですね」
「そや、あいつが出て来たらや」
まさにだ。その時にだというのだ。
「打つんや。さもないとや」
「うちの勝ちはないですね」
「あいつと打たへんと」
「それは前から言ってる通りや」
まさにそうだと言う西本だった。そうしてだった。
選手達にだ。また言ったのである。
「山口が出ても絶対に打つんや」
「はい、それじゃあ」
「絶対に」
こうしてだった。ナインはいよいよだ。その第二戦に赴くのだった。
第二戦は中盤まで一対一で進んだ。しかしだ。
その五回裏にだ。彼がマウンドに来たのだった。
「来たで」
「山口やなあ」
「ここで出て来たわ」
「阪急も本気やで」
球場の近鉄ファン達がだ。彼のその姿を見てだ。そのうえでだ。
どうなるかという顔でだ。こうそれぞれ言ったのだった。
「ここで誰か打てればなあ」
「勝負は決まるんやけれどな」
この試合だけでなくだ。プレーオフ全体がだというのだ。
だからこそだ。彼等は緊張した面持ちで言うのだった。
「さて、五十年は全然打てんかったけれどな」
「あの時は誰もさっぱりやった」
「ペナントと一緒で山口には手も足も出んかった」
「それで終わりやった」
あの時のことをだ。彼等も話すのだった。
だがそれでもだ。ベンチにいる西本はだ。
ナイン達にだ。ここでもこう言ったのである。
「今の御前等なら打てるで」
「今のわし等ならですか」
「打てるんですか」
「そや、打てる」
大丈夫だとだ。やはり言うのだった。
「だから安心するんや」
「はい、わかりました」
「それならですね」
「ここは安心して」
「そうあ、安心して行くんや」
まさにそうしろと告げる西本だった。その彼の言葉を受けてだ。
近鉄の選手達は山口にも向かった。そうしてだった。
ランナー二人の状況でだ。バッターボックスに向かうのは有田だった。その彼に対してだ。
西本は呼び止めてからだ。こう彼に声をかけた。
「ほな打ってこい」
「山口をこれからですね」
「そや、
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