Episode 3 デリバリー始めました
北京ダックつくるよ!
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ちに、キシリアはニヤリと人の悪い笑みを向けた。
「だーめ」
その言葉に、ケットシーたちの目が涙に潤む。
「なんでニャ!!」
「ずるいニャ!! ポメもテリアもがんばったのに、ご褒美なしかニャ!?」
すると、キシリアはその手にもった北京ダックを指差し、つまらなさそうにこう告げた。
「だって、これ、白森髭入ってるし。 まだ仕事が残っているのに、お前らに倒れられても困るんだよね」
ネギ、もとい森髭。
それは、猫族にとっての猛毒である硫化アリルを含む天敵である。
二匹の顔に緊張の汗が滴り落ちた。
「そ、それは……」
「くっ、ならば白森髭無しでっ!」
予想通りの反応に、キシリアきククッと喉の奥で小さく嗤う。
「なんだ、最高の味じゃなくてもいいのか?」
毒であることはわかっている。
だが、強欲な怪盗である二人に、最高でない味で我慢するという選択肢はありえない。
全てを見越した上での発言だ。
「「……」」
二匹はただ沈黙するしか無かった。
――苛めるのはここまでにしておくか。
「事が全て終わったら、硫化アリル耐性剤を用意してやる。 それまでは各自励むがいい」
キシリアが魔界で暮らすうちに見つけた怪しげな薬の中に、硫化アリルへの耐性をつける秘薬がある。
ケットシーをはじめとしたネギ系植物に耐性のない生き物が、毒殺への備えとして開発したものらしいのだが、調合が難しいために特殊な入手経路が必要となるかなりの珍品だ。
……まぁ、飲むと若干味覚に影響が出るため、最高の味を楽しむことは出来ないらしいのだが、そんな事は言わなければどうにでもなるだろう。
「さぁ、もたもたしていると時間がなくなるぞ! 昼までに弁当の準備が間に合わなかったら、お前ら明日のコロッケの材料に混ぜるからな!」
魔女め……
いまに見てろだニャ
そんな呟きをこぼしながら、てきぱきと働くケットシーたちを眺め、キシリアは北京ダックの皮をナイフで剥ぎ取り、そして残ったアヒル肉をどう始末するかを思案するのであった。
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