Episode 3 デリバリー始めました
北京ダックつくるよ!
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
別に野生動物をペット扱いする心算は無いが、さすがに臓物料理は日持ちしないため、たとえ売ったとしてもキシリアが消費できる量は限られているのだ。
腐らせるぐらいなら振舞ったほうが気持ちがいいし、どうせ食わせるならば、たとえ野良犬相手でも最高のものを食わせてやりたい。
まぁ、味を占めて居座られても困るため、店から離れた場所までもってゆく必要はあるが。
やがて作業小屋の中から聞こえる音の質が僅かに変わり、板の隙間から漏れる匂いも最高にまろやかになった頃、キシリアはようやく作業小屋の扉を開いた。
「「ふおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
ケットシーたちの感嘆の声が見事に唱和する。
中から出てきたのは、黄金に輝く、艶やかで滑らかな肌。
竈の熱の中で皮水となじんだ表皮の色がテラテラと輝き、なんともいえず食欲を誘う。
そして、悩殺的といっても良いほどの薫香を纏いながら出てきたソレに、キシリアはまるで儀式のように厳粛な面持ちでナイフを入れた。
切れた肌の隙間から、ぴっと音を立てて濃厚な脂が飛び出す。
頬にかかったその脂を指でなぞり、小さな舌で舐めとると、キシリアは満足げにニヤリと嗤った。
幼さの残る少女の顔には似つかわしくない、なんとも艶かしい表情である。
「これが……北京ダック」
「なんて美味そうだニャ……」
キシリアの満足げな顔を凝視しながらケットシーたちがゴクリと唾を飲み込む。
「なんだ、味見がしたいのか?」
そんなに二匹を振り返り、わざと小首をかしげるキシリア。
実に魅力的なお誘いだ。
だが、ケットシーたちは尻尾をパンパンに膨らませて警戒していた。
「……くっ、卑怯な」
「罠だ、これは絶対に罠だニャ」
味見したいのは山々である。
だが、今までの経験が素直に頷くことを躊躇わせた。
「まぁ、いいや。 せっかくだから北京ダックの食べ方を教えてやろう。 まず、この飴を塗った皮だけをそぎ落とす。 そして、白森髭の葉を添えて鴨餅というクレープ生地で包んで、鴨醤につけて食べる」
そう告げると、キシリアはいつの間にか用意していた鴨餅に、ナイフで削り取った北京ダックの皮を落すと、白髪ネギ……もとい白森髭の葉と共にくるんで鴨醤の入った小皿にそっと浸した。
鴨醤の材料は、甜麺醤、白砂糖、ごま油、塩。
魔界産で補った代用品であるために人間界のものとは若干味が異なるが、北京ダックの魅力をけっして損なわない非常に優秀なタレである。
その完成品を一口ほおばると、キシリアは満足げに目を閉じて、フゥ……とため息をついた。
「完……璧……」
「にゃあぁぁぁぁ! やっぱり一口欲しいニャ」
「ずるいニャ! 俺にも一口よこすニャ!!」
たまらず押しかけるケットシーた
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ