Episode 3 デリバリー始めました
北京ダックつくるよ!
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ない光景だ。
「ニャー 判ってはいるけど、キモいものはキモいニャ。 キシリアはよく平気で出来るニャ」
口を押さえたまましゃべる気力もないテリアの背中をさすりながら、ポメが眉間に皺を寄せる。
今後、自分たちもコレをやるのかと思うと、なかなか気が滅入る話だ。
「何を大げさな。 こんなの、辺境の農家のオバサンなら誰でも出来る」
かつてキシリアが人間の男として旅した国々では、肉屋でなくても普通の主婦が鶏をしめて食卓に並べることが普通だった。
残酷なのではない……いや、本当は残酷なのだろう。
だが、おそらくそれが生きるという事なのだ。
現実を知らないという事は、もしかしたら幸せなことなのかも知らない。
「いや、その表現わからないって……農家って何ニャ?」
「たまにキシリアは理解できない単語を使うニャ」
あぁ、そういえばこの世界に農家は無かったな。
ケットシーたちの困惑した顔に、ようやくキシリアも気づく。
「悪いが答える心算はない。 さて、次の作業だ。 こいつを外の作業台に移動させるぞ」
所詮、今となっては存在しているかどうかも証明できない遠い国の話だ。
説明をする意味もない。
ケットシー達の疑問を切り捨てて、キシリアは作業場のドアを開く。
するとそこには、さらに北京ダックに火を入れるために作られた即席の竈つきの作業小屋が作られていた。
そしてケットシー達の怪盗系の理力で巨大なテンチャーを運搬すると、上から下がった大きな鉤にテンチャーを吊り下げ、続いて水の入った桶や、皮水と呼ばれる水で伸ばした飴糖を用意する。
「さて、今から本格的な作業に入る。 まずは……内臓を抜いた後に空気を送り込むんだ」
そう告げると、キシリアはテンチャーの口を開き、周囲の大気に自らの理力をなじませる。
そして内臓を失ってがらんどうになったテンチャーの体の中に空気を送り込むと、その体を風船のように膨らませた。
「次に、皮水の吸着を高めるために表面をお湯で洗う」
キシリアの理力に操られ、汲み置きの水が一瞬で沸騰し、さらに蛇のように空中を泳いでテンチャーの表面を覆う。
皮が熱で縮み、表面がピンと張り詰めた。
「さらに熱が冷めないうちに皮水を表面に塗る……さすがにこの作業は理力が無いと無理だな。自分で考えて工夫しろ」
今度は飴糖を伸ばした皮水に理力を通し、薄い膜にしてテンチャーの全身を覆うのだが、なにせ相手は全長6mの巨体である。
これを皮水が乾く前に満遍なく塗るのは、本人の台詞通り理力抜きでは至難の業だろう。
なお、この作業のポイントは二つ。
一つは満遍なく全体を皮水で覆うこと。
そしてもう一つは、一度塗ったら絶対に表面
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