Episode 3 デリバリー始めました
北京ダックつくるよ!
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でなんとかするか」
そう言いながら、キシリアは右手を前に伸ばしてピシリと指を鳴らす。
ただそれだけ。
そのたった一度の動作一つで、この場に横たえられていた6羽のテンチャーの羽毛が抜け落ちた。
あまつさえ、抜け落ちた羽は見えない箒に掃かれたかのように作業場の隅にまとめられる。
その間、わずか30秒。
――今までの作業は何だったんだ?
ケットシーたちが心の中でそう呟いたことは、想像に固くない。
ちなみに魔法ではない。
キシリアの属する妖精シルキーの得意技、生活系の理力の効果だ。
そのイマジネーションの許す限り、キシリアは現代日本のキッチンの能力を、いや、それ以上の奇跡じみた現象を、おのれの意志一つで成し遂げることが出来るのだ。
まぁ、代わりに外に出れば火矢の一つも放つことは出来ないし、武器を手に取り戦うことも出来はしない。
彼女は、家の中と家事に関わることだけにおいて万能なのである。
そして、その偉大な力を見せ付けられたケットシー達は……
できるなら最初からお前がやれとの冷たい視線をキシリアに向けていた。
もっとも、それにキシリアが冷ややかな笑顔以外で答えることは無かったが。
――絶対にこいつS入ってるな。
ケットシーに二匹は、奇しくも同じ台詞を心の中で呟いていた。
「さて、次にやらなきゃならんことだが、北京ダックを作るには内臓が邪魔になる」
ケットシーたちの非難の視線をガチ無視すると、キシリアはどこからか取り出したナイフをテンチャーの脇に当て、何の躊躇もなく切っ先を差し込んだ。
「だから、こうやっていくつも切れ目を入れたりして、内臓を全部引きずり出すんだ。 ただ、闇雲にナイフをさして内蔵を引っ張っても意味はない。 どこをどうすれば綺麗に内臓を取り出せるのか? それを知り尽くしてこその料理人だと思って欲しい。 つーか、そのうち、お前らにもコレやってもらうから覚悟しとけよ」
そう告げると、キシリアは続いて欠片も表情を変えずに、テンチャーの肛門に手を突っ込んだ。
やがて、キシリアによるテンチャーの下ごしらえが終わる頃、ポメとテリアは真っ青な顔で地面にへたり込んでいた。
「うぇっぷ。 殺すことにも死体に触ることにも慣れていたつもりだったけど、これはキツいニャ」
「なんというか、殺すという作業のさらに向こう側って感じだニャ」
「ナメたこと抜かすな。 食べるって事は残酷なことなんだよ。 お前らがいつも食ってる肉だって、誰かがこうして腸掻っ捌いたから手に入るんだぞ」
腰に手を当てて説教するキシリア。
その純白のエプロンには血の痕どころか染み一つない。
全ては理力のなせる業である。
結果だけを見たならば、特にグロくも嫌悪も感じ
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