第六十四話 やっぱ父は娘には弱いよなぁ
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「そ、そうよ! 気に入ったって言ったのは、アイツの実力なんだから!」
そう思い闘悟の顔を思い浮かべる。
「でも……あの黒い目……綺麗だったなぁ……」
しばらくぼ〜っとしていたステリアは、体を起こして何かを決めたように頷く。
「よし! やっぱり決めたわ!」
そう言うと足早に父であるブラスを探しに行った。
ブラスは一人で書斎(しょさい)にいた。
「おおステリア、どうしたんだ?」
「お父様、お願いがあるの!」
「お願い?」
するとブラスは眉間にしわを寄せる。
少し嫌な予感を感じたからだ。
「まさか、また依頼を受けるとか言うのかい?」
不安そうに聞いてくるが、ステリアは首を横に振る。
「ううん、違うわ」
「違う? じゃあ何だい?」
ブラスは違うと聞き、少しホッとした。
「お父様って『ヴェルーナ魔武大会』を観戦しに行くのよね?」
「うむ。毎年各国の代表がグレイハーツ国王に呼ばれているからね。まあ、王直々行くのは私ぐらいだが」
「今年ももちろん行くわよね?」
「ああ、通達(つうたつ)も来ているしね。今年は参加者数が多く、盛大な大会になるそうだから、楽しみだよ」
ブラスは口元を綻(ほころ)ばせ、顎髭(あごひげ)を触りながら言う。
「それがどうかしたのかい?」
「アタシも連れてって!」
「ええ!?」
ステリアの願いとは、もう少しで開催される『ヴェルーナ魔武大会』の観戦に同行することだった。
突然の娘からの願いに戸惑う。
「本当は出場したいけど、そこまで我(わ)が儘(まま)は言わないわ! だからお願い!」
「むぅ……」
ブラスは困ったように唸(うな)る。
先程ステリア自身、母親であるメアリスに外出の件で注意を受けたばかりなのだ。
それなのに、また外出となったら面倒なことになりかねないとブラスは感じていた。
正直に言えば、自分も可愛い一人娘を外に出すのはいい気分ではない。
できれば、他国の王女のように慎(つつ)ましやかに過ごしてもらいたいと思っている。
だが、娘の真剣さを感じ取り、ブラスはある条件を出すことで許可することにした。
「条件がある」
「何でも聞くわ」
「一つ、私の言うことは必ず聞くこと」
「ええ」
「一つ、道中(どうちゅう)危険なことが起きたら、すぐに引き返すこと」
「……ええ」
「そして最後に、依頼を受けるなとは言わない。だが、せめてこれからは、私にだけでも、どんな依頼を受けるのかを報告すること。それを守れるかい?」
「…………分かったわ」
ステリアは歯噛(はが)みしながら、泣く泣くその条件を
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