第三十二話 不安
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「まあそれが分かる程度にはお前を理解出来るようになった」
お父様が笑うとエーリッヒ様は困った様な表情をした。皆に褒められても嬉しくないのかしら。エーリッヒ様が水を一口飲んだ。
「義父上、私はリューネブルク中将にイゼルローン要塞には二年ほど居て貰う事になると頼んだのです」
「二年か……、となると予想よりも随分と早いな」
お父様がシュニッツェルを口に運んだ。エーリッヒ様もシュニッツェルを口に運ぶ。“美味いな”、“いけますね”と二人が話している。
「前回のイゼルローン回廊での戦いから半年です。敗戦後の混乱、体制の立て直し、作戦の準備期間、それを考えると義父上の仰る通り反乱軍の行動はかなり早い。準備はしていましたから慌てはしませんでしたがちょっと驚きました」
「うむ」
「危ない所だったと思います。間に有ったから良かったですがそうでなければ……」
「イゼルローン要塞は陥落していたか……」
「はい」
「うーむ、確かにそれでは喜んでばかりもいられんな」
お父様が唸っている。唸りながらシュニッツェルを食べた。
「この後、帝国内で混乱が起きるかもしれません」
「……」
混乱? 何の事だろう、お父様とお母様を見たけれど二人とも何も言わない。難しい顔をして黙っている。普通ならそんなことは有り得ないと言うはずだけど、二人とも思い当たるフシが有るのかしら……。
「混乱するとお前は思うのだな」
お父様が顔を顰めている。
「不満を持つ人間は少なからずいるはずです。それを煽る人間も居る」
「煽る……、なるほど、フェザーンか……。有り得る話だな、そうであれば帝国は混乱するやもしれん」
お父様がお母様に視線を向けるとお母様が同意するかのように頷いた。私も質問して良いのかしら? お母様を見たけどお母様は厳しい表情で首を振った。子供は口を挟むな、そういう事かしら。不満は有ったけど黙ってトマトを口に運んだ。美味しいけど、なんか美味しくない感じがする。
「反乱軍が黙ってそれを見ていると思いますか?」
エーリッヒ様とお父様が顔を見合わせている。
「……お前の懸念は分かる。しかし方面軍司令部は有効なのだろう。今回の戦いではかなり役に立ったと聞いているが……」
お父様の言葉にエーリッヒ様が首を横に振った。違うの? 役に立ってはいないのかしら……。
「戦闘に入るまでは問題ありません。ですが戦闘に入った時どうなるか……。要塞司令部と駐留艦隊司令部が指示に従って有機的に連動するか、今回は戦闘が起きなかったため確認はとれていません。不安要素が無いとは言えないのです……」
「うーむ」
お父様がまた唸った。
「念のためミューゼル提督に四個艦隊を預けてイゼルローン要塞に待機させますが……」
溜息を吐いたエーリッヒ様を見てお父様が微
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