第三十二話 不安
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れる事を知っていたようです」
トリューニヒト国防委員長の視線が厳しくなった。そして小さな声で問いかけてきた。
『情報漏洩が有ったという事かな、本部長。事実としたら厄介な事だが』
「分かりません。向こうはブラウンシュバイク公がこちらの策を見破ったと言っているそうです」
『ブラウンシュバイク公……、しかし幾らなんでも……』
国防委員長が顔を顰めている。そう、本来なら有り得ない。しかし本当にそう言えるのか……。
「訝しい話ではあります。遠征軍が戻り次第、検証する必要が有るでしょう」
トリューニヒト国防委員長が頷いた。
「今回の作戦で艦隊に損害は有りませんでした。しかし暫くは軍事行動は控えざるを得ません」
軍内部にモグラが居るのなら放置はできない。国防委員長がまた頷いた。
『そうだな、今回の敗因を突きとめるまでは難しいだろう。帝国軍にはそれまで大人しくして欲しいものだ』
全く同感だ、現状で軍事行動を起こすのはリスクが大きすぎる。厄介な状況になった……。
帝国暦487年 7月 14日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 エリザベート・フォン・ブラウンシュバイク
「そうですか、彼らが来ましたか」
「うむ、皆がお前を褒めていたな。神算鬼謀、稀代の名将と」
お父様が嬉しそうに言うとエーリッヒ様はちょっと困ったように笑みを浮かべた。照れてるのかしら。
今日、イゼルローン要塞に押し寄せた反乱軍が撤退すると大勢の貴族達が屋敷に押し掛けてきた。ヒルデスハイム伯、ランズベルク伯、ヴォルフスブルク子爵、シェッツラー子爵、ヘルダー子爵、カルナップ男爵、ホージンガー男爵、ハルツ男爵、ラートブルフ男爵……。
彼らは皆口々にエーリッヒ様を褒め称えた。“神算鬼謀”、“稀代の名将”、“叛徒共も公の前には手も足も出ない”……。正直嬉しかった、エーリッヒ様は本当に凄い。ブラウンシュバイク公爵家の当主に相応しい人だし皆から頼りにされるのも当然だと思う。
「それにしても一体何時の間に知ったのでしょう。私達が知る前に彼らは此処に来たのですけど」
お母様が問いかけるとエーリッヒ様がまた笑みを浮かべた。今度は苦笑いかしら。
「宮中だと思います、リヒテンラーデ侯が大々的に広めると言っていました。軍から侯に報告したのですが、そのすぐ後に侯が皆に広めたのでしょう」
今日はエーリッヒ様の御帰りが早かったから皆で夕食を摂りながらお話し出来る。最初は慣れなくて緊張したけど最近ではエーリッヒ様が居ない夕食はちょっと寂しい。お父様もお母様も“一人増えるだけで随分と違う”と言っている。うん、ナスとトマトのチーズ焼きが美味しい。ベーコンがカリカリしてる。
「どうした、あまり嬉しくはなさそうだが」
「分かりますか?」
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