第三十二話 不安
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るだろうとブラウンシュバイク公が予測したと……。その時潜入してくるのは帝国語に堪能なローゼンリッターだろうと。それで彼が極秘にイゼルローン要塞に配備されたそうです』
またキャゼルヌの呻き声が聞こえた。
「信じられん……」
信じられんとしか言いようがない。こちらの作戦をブラウンシュバイク公が見破ったと言うのか……。有り得ない、信じられない話だ。しかし現実にクブルスリーは私の目の前で悔しそうに顔を歪ませている。情報漏洩か、見破られたか、厄介な事になった……。
「艦隊に損害は……」
『有りません。損害は要塞内に送り込んだローゼンリッターだけです。我々は現在、ハイネセンに向かって帰投しております』
「そうか……。御苦労だった、司令長官。要塞攻略が失敗したのは残念だが艦隊に損害が無いのは何よりだ。気を落さず次の機会を待とう」
『はっ』
次の機会か……。そんなものが有るのだろうか……。何も映さなくなったTV電話を見ながら思った。期待が大きかっただけに失望も大きい。それにしてもどちらだろう……。通常なら情報漏洩を疑うところだ。しかしブラウンシュバイク公か……。これまでの事を考えれば彼がこちらの策を見破った可能性も否定できない。
「厄介な相手だな」
「……」
私の言葉にキャゼルヌが無言で頷いた。
「ヤン准将の言った通りかもしれない。我々はほんの僅かだが遅かった、ほんの僅かだが……」
もしブラウンシュバイク公が見破ったのなら、方面軍司令部が出来る前なら成功の可能性は有ったかもしれない。ほんの僅かだが遅かった。だが、そのほんの僅かが重いのだ。その重みはブラウンシュバイク公の重みでもある。溜息の出る重みだ……。
溜息を吐いてばかりもいられない。気を取り直してトリューニヒト国防委員長に通信を入れた。嫌な役目だ、最近では負け戦の報告しかしていない。
『やあ、シトレ本部長、一体何の用かな』
「残念な報告をしなければなりません」
トリューニヒト国防委員長の顔から笑みが消えた。何が起きたか分かったのだろう。
『イゼルローン要塞攻略戦は失敗したのだね』
「その通りです」
トリューニヒト国防委員長が何かに耐えるかのように目を閉じた。芝居がかった事をと思ったが半分くらいは本心からかとも思った。成功率は決して低くない、皆がそう思っていたはずだ。
『成功率は高いと思ったのだが……』
ノロノロとした生気の感じられない口調だ。
「イゼルローン要塞にリューネブルク中将が居たそうです」
『リューネブルク中将……。そうか、不運だな……』
力なく首を振った、トリューニヒト国防委員長はリューネブルクが要塞に居た事を偶然だと思っている。
「偶然ではありません」
『偶然ではない?』
「リューネブルク中将はこちらが要塞内に兵を入
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