参ノ巻
文櫃
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「はい、ございます」
「義兄上も、随分用意の良いことだ」
高彬は苦笑した。
「雪、ありがとう。もういいから尉高義兄上には宜しく伝えてくれ」
「はい。畏まりました」
そうして再び部屋はあたしと高彬の二人きりになった。
「ねぇ、高彬、あんた、酒乱・・・ってことはないわけ?」
あたしはくすくすと笑いながら言った。すると高彬は呆れたように答えた。
「それは、瑠螺蔚さん、あなただろう?酒を飲んで、記憶がなくて・・・なんて、案外大暴れでもしたんじゃないの?」
「あたしが?大人しい姫の代名詞であるこのあたしがそんなことする訳ないでしょ」
「瑠螺蔚さんがホントに大人しい姫であったなら僕はこんなに苦労してないよ」
「それは・・・まぁ、ゴメンね。これからは大人しくするよう心がけるわ。・・・多分」
数々の所行が蘇ってあたしも素直に謝るしかない。
「そうであるよう願ってるよ」
「ご期待に添えるよう努力しマス。ほら杯持って」
あたしと高彬はささやかに笑いあった。
なんだか、むずがゆいような変な感じだけど、こんなのも、悪くない。
「あたしが高彬に酌するなんて・・・おっきくなったわねぇお互い」
「もういくつだと思ってるの」
高彬は笑いながら一息に杯を干した。
「ほら、瑠螺蔚さんも。喉渇いているだろう」
「仕方ないわねぇ、注がせてあげるわよ」
あたしも高彬に白湯を注いで貰う。たぷたぷと、湯は杯に満ちた。
はぁ。今日だけでも本当に疲れたわ。
あたしは疲れを振り切るように、それを一息に飲み干した。
「僕もちょっと貰おうかな」
「白湯を?いいけど・・・」
あたしは何事もなく、提子から高彬の持つ杯へと白湯を注いでいた、その筈だった。
それはもう、自分の意思と言うよりもほぼ反射だった。
あたしはいきなり提子をぱっと手から離すと、高彬の手にある杯を叩き払った。
下の畳には提子にたっぷりと入っていた白湯がこぼれ落ちて膝を濡らし、あたしに薙ぎ払われた杯は、無様に後ろの襖に叩き付けられて落ちた。
「何を・・・!?」
驚いている高彬。その姿が、ぶれる。
「ぇあ、」
それが、自分の出した声だと言うことに、少したってから気づいた。ぐぅわと逆らいがたい嘔吐感が昇ってきて、あたしは高彬の前だというのに吐いてし
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