Episode 3 デリバリー始めました
テンチャークエスト
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
相手の手を握らせるための狂気の宴。
なぜこんな馬鹿げた衝動が、どうにも自分を奮い立たせて、歓喜へといざなうのか?
判らない。
だが、理由なんてどうでもいい。
さぁ、踊ろう。
楽しいダンスの時間だ。
「しゃあぁぁぁぁぁっ!」
テンチャーの口から伸びた舌の鞭をギリギリのところで掻い潜り、ポメは猫の敏捷さでさらに一歩踏み込む。
そしてその身を投げ出すように前に転がり、敵の巨大な脚の間を潜り抜けた。
さらに斜めに転がって続く巨大な尻尾を回避すると、地面に手をついてボソリと呟く。
「エスコートはここまでだ……あばよ、化け物。 血なまぐさい大地の乙女と踊るがいいニャ」
次の瞬間、崖の上にまるでラインでも引いたかのごとく一直線にいくつもの爆発が起きる。
そしてその破滅の祝砲は、大地の一部を容赦なく削り取った。
そう――テンチャーのいる部分だけを。
「ほふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
まるで氷河の果てで巨大な氷解が海に崩れ落ちるが如く、長い悲鳴を轟かせながら、飛べない巨鳥は地の底へと墜ちていった。
「あー 死んでる死んでる。 ふー やれやれだニャ」
ポメが崖の下へとたどり着くと、そこには首の角度が明らかにおかしな方向に向いたテンチャーが転がっていた。
近寄って突いてみてもピクリとも動かない。
その魔眼からは光が失われ、口からは大量の血を吐き出していた。
これで死んでいないとしたら、それは屍帰人か人狼の類だろう。
「さぁて、コイツを家にもって帰ればミッションコンプリートだニャ。 あーめんどかった」
猫科独特の狭い肩をすくめ、持ち運びをどうしようか悩む前に獲物の上に腰掛けて一息つくポメ。
なんとも気だるげで傲慢な振る舞いだが、そんな仕草がこの上もなく似合う。
ケットシーとは、そんな生き物だった。
「……でも、ちょっと楽しかったニャ」
息絶えたテンチャーの顔にドッカリと後ろ足をのせると、ニヤリと嗤って独り言のように呟いく。
だが、彼はまだ気づかない。
その後ろに、新たなる影が緑の魔眼を光らせて様子を伺っていたことを。
「んー いっそ、テリアのヤツに理力使わせて全部一気に転移させるかニャ。 俺様だけこんな怖い思いをして負担を強いられるのは不公平ニャ」
眉間に軽く皺を寄せながら、通信用の魔道具を指でいじる。
そう、彼は知らなかった。
その頃、末っ子であるテリアがキシリアの狂的調理の実験に付き合わされて、身の細るような思いをしていたことを。
そして……逃げ惑っている間に、いつのまにか別のテンチャーの縄張りに入り込んでいたことを。
ポメの背後で、ザワリと風が動いた。
「何ニャ……
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ