第二十六話 江田島へその十
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「楽に行けるからね」
「それが凄いわよね」
「いい私鉄よね」
「ええ、本当にね」
「国鉄みたいね」
里香は駅のホームでその八条鉄道の青い車両が広島の方に行くのを見ていた、呉で終点で行くのは広島だけだからだ。
「ここはね」
「国鉄って。古いわね」
「今はJRだけれどね」
景子に話す。
「それもあちこちに分かれてるけれど」
「JR東日本とかJR西日本とか」
「そう分かれてるけれどね」
だが八条鉄道は一つだ、これが大きいのだ。
「日本最大の私鉄だからね」
「近鉄以上よね」
「近鉄は近畿と東海だけだから」
名古屋が東海である、三重は近畿に入ることも多い。
「日本全国じゃないから」
「そこが違うわね」
「そう、八条鉄道は別格よ」
国鉄があった頃は第二国鉄とさえ呼ばれた、それだけの路線面積を誇ったからだ。またその待遇も公務員的なのだ。
「だから神戸から呉もね
「広島から乗り換えて行ける」
「同じ鉄道で」
「そう、八条鉄道だけよ」
だから便利だというのだ、だがだった。
里香は四人にこうも言った、既に軽音楽部全体で呉駅を出てそこから別の場所に向かおうとしていた。そこはというと。
「ただ、江田島だからね」
「あっ、島よね」
「電車で行けるのはここまでよ」
こう自分の隣にいる琴乃に話す。皆八条学園の大きな鞄の中にジャージや洗面用具を入れて運んでいる。
「後はフェリーで行くから」
「お船でなのね」
「船ですぐだけれどね」
江田島にすぐに行けるというのだ。
「けれど船に乗らないと行けないから」
「絶対になの」
「一応陸続きだけれど遠回りなの」
フェリーを使わない場合はそうなるというのだ。
「それだとね」
「橋はかかってるのね」
「そうなの、ちゃんと行けるから」
陸からもというのだ。
「けれどそれでもね」
「相当遠回りになるのね」
「けれどフェリーだったらすぐだから」
話をしながらその港に向かう、駅を出ると中々立派な市街地であり道を行く車の数も多い。駅も結構な大きさで本屋も充実していた。もっとも今はその本屋には入っていないが。
港は小さい、だがやはりその中は綺麗で白いフェリーが停まっている。先生がそのフェリーを指差して言う。
「あれに乗るわよ」
「あのフェリーに乗ってですね」
「皆で行くんですね」
「そうよ、皆ね」
軽音楽部だけでなく他の部活の面々も一緒だが彼等もだというのだ。
「江田島の合宿所に行くわよ」
「海軍兵学校ですか?」
吹奏楽部の二年の男子生徒の一人が笑って冗談を言って来た。見れば吹奏楽部の生徒の数がダントツに多い。
「そこですか?」
「もう海軍ないわよ」
先生は笑ってその二年生に返した。
「海上自衛隊幹部候補生学校よ」
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