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万華鏡
第二十六話 江田島へその七

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「男の子ならね」
「そうみたいね」
「わかるでしょ、それは」
「ええ、本当に皆だから」
 見てくるというのだ。
「向こうは気付かれない様にしているつもりでもね」
「それでもね」
「わかるわ」 
 こう母に言う。
「視線感じるから」
「そうそう、弓矢みたいにね」
「ああいう視線ってわかるのね」
「すぐわかるでしょ」
「刺すみたいだから」 
 まさにそうした感じだからだった。
「感じるわ」
「そうよね、けれどね」
「ええ、それでもよね」
「そうしたことは受け入れてね」
 そしてだというのだ。
「気付かないふりをするものなのよ」
「あえてなの?」
「そう、あえてね」
「何かそれって不公平なんじゃないかしら」
「いいのよ、こっちだって見るでしょ」
 母は楽しげに笑って娘に話した。
「男の子のことね」
「あっ、そういえば」
「見るでしょ」
「うん、言われてみればね」
「そうでしょ。お母さん達だってそうだから」
 その世代からそうだったというのだ。
「というかどっちも相手には興味があるからね」
「ううん、女の子も男の子も」
「そう」
 本当にどちらもだった。
「興味があるでしょ。琴乃ちゃんもね」
「ええ、結構いいなって子がいるわ」
「好きとか?」
「そこまではいかないけれどね」
 恋愛感情まではというのだ。
「何かそこまではね」
「恋愛ね」
「そう、それはね」
 やはりないというのだ。
「何か今は部活が楽しくて」
「まあそういうのはそのうちだから」
「相手を見つけるっていうのね」
「そう、その時にね」
 母は娘にこのことも話した。
「見つけるものだから」
「ううん、どういった人かしら」
「その時にないとわからないわよ」
「そうした人を見つけた時?」
「そう、その時にね」
 まさにその時にだというのだ。
「わかるから」
「悪い人に騙されない様にしないとね」
「そのことには注意してね」
「ええ、それじゃあね」
「それでだけれど」
 男の子の話をしてからだった、母は娘にこのことも話した。
「広島は暑いからね」
「瀬戸内海だからよね」
「あそこは暑いから気をつけてね」
「相当暑いのよね」
「お昼寝してやり過ごす人もいる位だから」
 その暑さをだというのだ。
「だからね」
「それでなの」
「そう、暑いからね」
 さらに言う母だった。
「その暑さは気をつけてね」
「水分とか摂らないと」
「そう、危ないわよ」
 それがだというのだ。
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