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東方小噺
橋姫と邪仙
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よう。ゆらり、ゆらり。水面〈シの境〉が忍び寄るようで、この地を侵す。背後に流れる紫煙は中に燻り白い靄。まるで別世界が滲み出す様で。 

(――これが、女子力)

 パルシィは戦慄する。噂に聞く女子力。それがある女性は他を圧倒するとか。本能でわかるのだ、目の前の美女はそれが完璧。合コンなどでは男どもの目を釘付けにするだろう。
 侮っていたのだ。その存在を。驕っていたのだ。その力を。
 理解する。これが、この差が自分が感じていた嫌悪感。何せ自分には、あんな胸を強調する服を着て、あんな体を揺らしながら歩けない。何かもう心が無理って叫んで出来ない。こんな身なれどプライドはあるのだ。

 風が吹く。GF(ガールズハイド)の風だ。女子力の差がデカすぎて、こんな場所にいたらいずれ倒れてしまう。
 だが、パルシィは足に力を入れる。
 ここで負けては橋姫の名がすたる。嫉妬の心が折れる。負けを認めても引くな。負けて下になっても見下す心を。
 グループの仲間に、申し訳がたたない。不意に、中本の思い出が脳裏をめぐる。

――会長、盗人魔法使いと香霖堂の店主が何かいい感じです。ブンヤにチクってきます。
 一時期村を上げて囃したてられ、魔法使いは恥かしげながらスゲェ幸せそうだった。パルい。

――会長、あのカップルウザいです。何が肝試しなんですかね。ちょっと病気にしてきます。
 女の方の献身的介護で男の心は一層傾いた。パルい。

――会長ー、前言った好きな人に既に好きな人が……あああああああ
 皆で飲みに行った。飲みすぎて吐いたネズミの背をさすってやった。

――会長さんや、ちょいと儂の話を聞いて……
 ああ、こいつはいいや。

 思い出が、パルシィに力を与える。向かう敵への勇気をくれる。パルシィが一歩、足を踏み出す。これは皆の一歩。負けるものか。

「……何やってるの?」

 いつの間にか覚悟を決めた顔をしたパルシィを見て美女が言う。突然よくわからない気配を出して変な動作して頭がおかしくなったのかと思ったのだ。
 まあそんなことがあった数秒。二人の距離が近づく。
 
 近くで見れば見るほど美女はその言葉がふさわしい。血のように赤いルージュ、白い肌にほんのりとした頬の赤み。心をくすぐるようなややタレ目。
 まあ、ぶっちゃけ羨ましくもなんともないが。自分に置き換えてみたら無理だこれ。パルシィは思った。ルンルン気分で口紅を塗る自分を想像して何か吐きそうだった。

「ここは禁煙です。健康を気遣ってください」
「妖怪なのに、面白いわね」

 ふぅー、と顔に煙を吹きかけられる。僅かな甘さと、枯れ草の匂い。舐めているのだろうかこの相手は。取り敢えず唾を飛ばしたら避けられた。ファッキン。その際に美女の胸がぶるんと揺れる。パル
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