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東方小噺
橋姫と邪仙
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あるならさっさと行け」
「あら、手伝ってくださらないの?」
「誰が手伝うか。旧都にでも行ってモブ達にでもその無駄にでかい胸を揉みしだかれてしまえ。薄い本みたいになってしまえ」
「あら、ツレないのね。あなたモテなさそうですものね」
「自慢かああああああ!? 脂肪の塊の何が偉いんじゃああああああ!!! 妬ましいい!!!!」

 決して薄くはないが、豊満だと言ったら知り合いの吊鐘落としや鬼から「ハッ!」と冷たい目で見られる程度のパルシィの胸。迎え討つは何アレ顔うずめて寝たら気持ちいいんじゃね? 手に収まり切るの? という大きなお胸。御胸様、おっぱいである。
 パルシィは認めない。脂肪の何が偉い。腹にあったら蔑むくせに胸なら偉いのかこんちくしょう。こちとら胸にだって無駄がないぞおら羨めよとばかりの怨念を世界に向ける。こんな世界間違っている。もっかい橋から身を投げてやろうかこの野郎。
 体を預けていた壁から立ち上がり、パルシィは両手で中指をおったてる。

「うふ、愉快ですわね。実はですね、探し物は猫に連れ去られたんです」
「ああ?」
「だから猫ですよ、猫。火車猫。ご存知ありません? 家の死体に勝手にちょっかい出したようです」

 言われてふと思い出すのは地底の死体あさり。確かさとり妖怪のペットだったはずだ。

「今日は見てないけど、知ってるわよ。なら尚更行って薄い本にさっさとなりなさい。もう灰すらないかもね」
「それは恐ろしいことです。でも、もう大丈夫ですからご安心を」

 また、哂う。
 嫉妬心マックスである。

「それより、あなたに興味がわきました。噂に聞く橋姫とはあなたのことですね」
「そうだけど……噂?」
「曰く『喪女の鏡。ああなりたくないNO.1』だと」
「喧嘩売ってるのかお前」
「ああ、間違えました。正しくは『儂はああなりたくはないのう』でした」
「副会長おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 脳裏に浮かぶ眼鏡をかけた化け狸。最近向こうから会いに来て、見込みがあると思ったのにこれが裏切りか。そう言えば何か本に載って人気が出たとかどうとか。パルシィの心の嫉妬帳に名前が刻まれる。次の会合では糾弾である。
 クスクスと美女が笑う。

「あらあら、元気がいいですわね」
「そんなに私を笑って楽しいか。嫉妬パワーが溜まってきたぞ。嫉妬玉喰らいたいか。取り敢えず一発殴らせろ。そうすれば通してやる」
「ですから、もう平気です。それより私、気になることがあるんです」

 紫煙を口から吐き、美女が一歩。パルシィへと近づく。また、一歩。
 気味が悪い。蛇が音もなく近づくような、それを見ていることしかできないような張り付いた嫌悪感。
 美女の背後、影が揺れる。薄暗いこの中でもさらに暗く、夜の水面の
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