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トーゴの異世界無双
第六十三話 ステリアの兄さんってヤバくね?
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つく。
 ギレンは優しく包み込むように抱き、頭を撫でてやる。


「ところで、ステリアがそこまで嫌がるなんて、もしかして誰か意中(いちゅう)の相手でも見つかったのかな?」
「そ、そそそんなわけないわっ!」


 ステリアは顔を真っ赤にして首を横に振る。


「おや? 違ったかい? 珍しく僕の勘が外れたかな?」
「もう……ギレン兄様ったら……」


 恥ずかしそうに顔を伏せてしまう。
 そんな彼女を見て楽しそうに微笑する。


「あはは、ごめんごめん。でも、そういう相手が見つかったら教えてほしいな」
「え? ど、どうして?」


 ギレンの瞳に真剣さが見て取れる。


「本当にスティに相応しいかどうか見極めなければならないからね」


 顔は笑っているが、目は笑ってはいない。


「えと……もし変な人とかだったら?」
「あはは、そんなの決まってるだろう?」
「……」
「……埋める?」


 ギレン・セイン・アーダストリンクは、文武両道に秀でた若者である。
 王族独特の気品ある整った顔立ちを持っている。
 また人当たりもよく、民達からも慕われている。
 思いやりがあり、心優しい青年は、誰もが好意を抱くに相応しい人物と言えるだろう。
 ただ一つ、欠点を上げるとするなら、可愛い妹のためならどこまでも鬼になれるという、超シスコンだというステータスだろう。
 兄の言葉に、さすがに衝撃を受けたのか、固まっていたステリアを見てギレンは小さく笑う。


「あはは、冗談だよ冗談」
「そ、そうだよね! ギレン兄様がそんなことするわけないもんね!」
「ああ、その人が素敵な男性なら何も問題は無いさ」
「……」


 もし本当にギレンの眼鏡に適わなかった場合は?
 と聞こうかとステリアは思ったが、天使のような微笑みを向けてくる兄を見て、言葉を飲み込んでしまった。
 それ以上は聞いてはいけないと、自慢の勘が働いたからだ。


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