第63話
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
あの原初の姿がどれほどきついのかを。
あんなものはもう誰にも見せたくはなかった。
麻生の誠意が伝わったのか、取り巻きは女王をよろしくお願いします、と言って道を開けた。
「う・・・ん。」
操祈が目を覚まし最初に見えた物は見慣れた天井だった。
「ここ・・は・・・」
「保健室だ。」
操祈の問いかけに答えるように声が横から聞こえた。
顔を向けると麻生がパイプ椅子に座っていた。
どうやら保険医も今はいないようだ。
「どうやらギリギリ間に合ったみたいだな。」
「ギリギリ?」
操祈は思い出す。
あの地獄のような風景を、あの叫び声を。
一瞬で顔色が悪くなっていくが、麻生が操祈の頭を撫でると不思議と落ち着いていく。
「あんなものは忘れろ。
覚えていても何の得の無い。
あんなものを覚えているのは俺だけで充分だ。」
「あなたはあんなものを見て平気だったの?」
「平気な訳がない。
業火に呑まれ、その後は人の闇を見せられて廃人になったよ。
髪も黒髪から真っ白な白髪になってしまったしな。」
操祈は驚きを隠せなかった。
あの業火に呑まれてさらにきつい精神攻撃を受けても、今はこうして話をできるくらいまでに回復している事に。
ふと、時計を見ると時間は放課後の時間よりも大きく過ぎていた。
「ねぇ、もしかしてあなたずっと傍にいてくれたの?」
「そうだな、お前がこうなった原因は俺にある。
それがせめての償いだ。」
麻生は少し悲しい笑みを浮かべながらももう一度、操祈の頭を撫でる。
その笑みを見た操祈の胸はドキッ!、と胸の脈がうった。
「頭が痛い。
熱があるかもしれない。」
操祈がそう言うと麻生は操祈に近づいて手を使って熱を測ろうとした。
だが、操祈は麻生の手を掴むとそのままベットに押し倒す。
完全に油断していた麻生はされるがままに押し倒される。
「何のつもりだ?」
麻生がそう聞くと操祈は悪戯に笑みを浮かべた。
「わたし、あなたの事が好きになったみたい♪」
「は?」
一瞬何を言っているのか訳が分からなかった。
操祈はどんどん顔を近づけながら言う。
「顔はかっこいいし、性格は優しいし、もう完璧ねぇ。」
本来なら操祈ほどの女性にこんな事をされると普通の男なら興奮を隠せない。
だが、前にも言ったが麻生は普通の男ではない。
「それくらい冗談が言えるのならもう大丈夫だな。」
そう言って操祈を押し返した時だった。
「女王、もう大丈夫で・・・・・」
その時、空気が凍りついた。
保健室に入ってきた取り巻き三人と美琴。
そして、傍から見たら麻生が操祈を押し倒しているように見
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ