第63話
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
間が見ると確実に廃人になる。
なぜならそれは記憶であると同時にそれを実際に体験してしまうからだ。
天地開闢以前、星があらゆる生命の存在を許さなかった。
その姿はまさに地獄そのもの。
それは語り継がれる記憶には無いが、遺伝子に刻まれている。
この星に生きる生命ならその原初を見るだけで震えなどの恐怖を抱き、その業火に呑まれれば人格など消えてなくなってしまう。
これは生命において最強の精神攻撃だと言える。
なら、これを迎撃システムとして使えばどうなるだろうか?
つまりはこういう事だ。
麻生は星の自動補正で自身に干渉するモノは麻生の許可がなければ全て無効化される。
しかし、それでも何度もしつこく干渉してくるものがいれば自動的に迎撃システムが発動して、原初の姿を見せて敵の精神を破壊する。
その事に気づいた麻生は操祈が今、どういう状況なのかようやく把握する事が出来た。
おそらく、その業火に呑まれればいくら麻生でも元に戻す事は出来ない。
そして、操祈を救う事もできるのも麻生だけだ。
(あんなモノを見るのは俺だけで充分だ。)
麻生は立ち上がり、操祈に近づく。
取り巻きをどかし、操祈の前に立つ。
「何ですか、あなたは!?」
「邪魔をするな。
俺はこいつを助けないといけないんだ。」
尻もちをついている操祈と同じ視線までしゃがむ。
すると、操祈は小さく呟いた。
「たすけて・・・だれかたすけてよ・・・・」
その声を聞いた瞬間、麻生は操祈を優しく抱きしめた。
周りの生徒は驚くが麻生は気にしない。
美琴も操祈が気になってはいたが麻生が抱きしめる姿を見て驚いている。
そして、美琴が今までに聞いた事のないくらい麻生の優しい声が聞こえた。
「大丈夫だ。」
麻生は優しく話しかける。
声を聞くと、操祈の叫び声は治まっていく。
そして、操祈の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だから。
俺が傍にいるから。
だから、安心してくれ。」
まだ涙を流していたが振るえは少しずつ治まっていく。
「こんな悪い夢はこれで終わりだ。
安心して目を閉じればいい。
次に目が覚めた時には元の世界に戻っているから。」
その言葉に反応して、小さく頷いて目を閉じると操祈の身体の力が抜けていく。
麻生はそれを確認すると操祈をお姫様だっこする。
「女王!!」
取り巻きが駆け寄ってくる。
麻生は簡単な状態だけ説明する。
「彼女は俺が保健室まで運ぶ。」
「いいえ、わたくし達が運びます。」
「頼む、俺に運ばせてくれ。
彼女がこうなった原因は俺にある。
だから、頼む。」
あの麻生が頭を下げた。
おそらく今度一生見れないかもしれない。
だが、彼は知っている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ