暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission8 ヘベ
(3) マンションフルーレ302号室 B
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も語りきれない体験が詰まった一枚一枚。選び出しては、台紙に貼って飾り付ける。
 一枚写真が出るたびに、あの時はああだったこうだった、と話に華が咲いて作業は遅々として進まなかった。だが、ルドガーにとっては今日ほど充実した一日はない。卒業アルバム製作委員を押しつけられた時でさえ、こんな高揚した気分にはならなかった。

(ああ。俺、今、みんなの輪の中にいる)

 わいわい。がやがや。

 テーブル中央から減っていく写真。次々になくなるペーパーとレース。アルバム台紙の失敗作と、きりしろがテーブルに散乱する。仲間内で飛び交う、コメント用のカラーサインペン。ハギレと写真に埋まる裁ちバサミや定規。

(ようやくみんなの本当の仲間になれた)

 一枚からどんどん話が広がって、次はどこでああしようという計画まで持ち上がる始末。

 写真の海から自分が気に入った写真を、アルバムという、より明確な形で残す作業をする。それも仲間と協力しながら。

 集まったメンツの内7人がいい大人なのに、真剣にやっているのがコドモの工作だなんて。
 ここ何時間かでルドガーの口角はご機嫌に上がったまま戻らない。どうしてくれる。
 ユティのために開いたワークショップなのに、気づけばルドガーのほうが楽しんでいた。

(共有した時間が、思い出が、こんなにあるんだ。もう疎外感なんてない。もうさびしくない。俺もここの一員だって、この写真たちが証明してくれるから)



 ワークショップは夜を徹して続いた。大量の写真がテーブルからハケた時には、すでに太陽が高い位置に昇っていた(帰り際に「2日休みにしといてよかった…」とはジュードの言である)。

 テーブルには工作の切りくずが散らかって、人数分のコーヒーカップが物悲しく取り残されるのみである。

 思い出トーク×深夜のテンション+常人を越えたスペック=作業を前日の昼から今日の昼近くまでぶっ通しでもケロッとしているメンバー――という方程式が床を箒で掃くルドガーの重い頭に立ち上がった。

 もっともエルとエリーゼだけは年齢が年齢なので途中でダウンして、ルドガーの部屋のベッドに並べて寝かせた。エリーゼは解散になった時にアルヴィンとレイアが連れて帰った。入れ替わるようにミラがダウンしたので(ミュゼの前で緊張したのだろう)、今はミラがエルの隣で夢の中だ。

(俺からしてもベストショットのチャンスだと思ったのにユティの奴、動かなかった。そうでなくても、シャッターチャンスはいくらでもあって、カメラも手元にあったのに)

 部屋を片付けるルドガーを手伝って、テーブルの上の切りくずを摘まんではゴミ袋に捨てていくユティ。横顔は徹夜の疲れなどちらとも窺わせない。
 ルドガーはテーブルの上のマグカップを両手で持てるだけ
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