第五十九話 種を蒔いた甲斐があったな
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本なら問題は無いはずだ。
闘悟が選んだ本は、変にラブコメするものではなく、一途な少女の恋愛ものだ。
闘悟はヒナに渡す時、さらっと目を通しただけだが、ピュアなヒナにピッタリの本だと思っている。
「ん……なあに?」
ヒナが闘悟の視線に気づき首を傾げる。
「いんや、それ面白いかなと思ってさ」
「ん……面白い……よ」
「そりゃ良かった」
「でも……」
「ん?」
「恋って……難しそう……だね?」
そりゃ、十歳のヒナには難しいだろう。
ヒナの顔には少し陰(かげ)りのようなものが見えた。
闘悟は自分が恋の話題をしてしまったことに苦笑した。
「そうだな、恋愛にもいろんな形があるしな。子供には子供の。大人には大人の。その上、付き合う人によっても付き合い方が変わってくるしな」
「物知り……だね?」
「ま、まあな!」
はは、ラブコメのライトノベルで得た知識だとはとても言えん……。
「いつか……ヒナにも……わかる……かな?」
「そうだな、でもゆっくりでいいんだぞ」
そう言って彼女の頭を優しく撫でる。
微かに頬を緩めて気持ち良さそうに目を閉じる。
「ん……わかった」
闘悟が頭を撫でてると、後ろから殺気が届く。
「トーゴ様……」
闘悟はビクッと体を硬直させる。
そして、壊れたロボットのようにぎこちなく振り向く。
そこにいたのは、もちろんあの人だった。
「ク、クィル……?」
し、しまった!
また軽々しく頭を撫でてしまった!
「クィル! これはつい出来心で!」
そんな浮気が見つかった男の言い訳のような言葉を発するが、クィルはぷく〜っと頬を膨らませて完全に怒っている。
「トーゴ様!」
「ごめんクィル!」
それからしばらく説教をくらった闘悟であった。
ちなみに、ヒナは避難するように二人から離れて本の続きを読んでいた。
ヒナの危機管理能力は見習いたいなと、心から思う闘悟だった。
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