第五十九話 種を蒔いた甲斐があったな
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疑い深い平民は、それでも参加を渋(しぶ)るが、それでも良かった。
何も今回だけの大会ではない。
闘悟の考えとしては、今回は平民の力を貴族に見せるための大会だと考えている。
もちろん、負けるかもしれない。
平民は結局貴族に勝てないかもしれない。
だが、中には一矢を報いる者が出るかもしれない。
それでいいのだ。
何もしなければ何も変わらない。
たとえどんなに小さくても、一石を投じれば、水面は反応する。
まずは、それからだ。
小さな動きが、やがて大きな出来事を作る。
闘悟は、自身が描いた作戦の第一段階が滞(とどこお)りなく進められたことに満足していた。
学園でも大会の話で持ち切りだった。
にわかに活気づいてきた雰囲気だが、やはり平民の学生の中には、貴族を怖がってて、参加を渋っている者もいるようだ。
だが、闘悟はもう何もしない。
これ以上は強制になってしまう可能性が高い。
今渋ってる者に、「大丈夫だ」や、「参加することに意義がある」などと言っても仕方が無い。
参加はあくまで自分で決断してほしいのだ。
誰かの言葉で流されてしまえば、結果も誰かのせいにしてしまう。
それじゃ意味が無い。
負けても勝っても、自分の力だと考えてほしいのだ。
「そういや、ミラニは出るのか大会?」
「ああ、騎士団長は参加が義務だからな。それにいい訓練にもなる」
「前向きだな」
「貴様も参加するのだろう? できれば貴様とは決勝まで当たりたくは無いな」
「へぇ、前回はどうだったんだ?」
「前回は参加してはいない。私は今年任命されたからな」
「そうなのか? そんじゃ、前任者って誰だ?」
「あの方は今旅をなさっておられる」
「旅?」
「ああ、武者修行だ」
「へぇ、この世界でも武士みたいなやつっているんだなぁ」
「ブスだと? 貴様トーゴ! あの方の侮辱は許さんぞ!」
「いやいや、ブスじゃなくて武士! ぶ・し!」
「ん? ぶし? 何だそれは?」
ああもう、いちいちめんどくせえな。
「ん〜と……」
修行バカ?
いやいや、そんなこと言ったら真っ二つにされるな。
「そうだな……誇り高い剣士ってとこだ」
「そ、そうか? な、なるほど……ぶしとはそのような者のことを指すのか。よし、私もぶしを目指すぞ!」
まあ頑張れ。
闘悟はミラニから目を逸らす。
ヒナは椅子に座って本を読んでいる。
あれは、闘悟が選んでやった恋愛本だ。
あのバカメイムが恋の修羅場本なんか渡しやがるから、仕方無くオレが選ぶことになっちまった。
メイムには報復として、あの後、頭グリグリの刑を執行しておいた。
でもまあ、あの
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