第百二十三話 拝領その五
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「麻呂も最初話を聞いた時に驚きました」
「山科殿もでおじゃるか」
「ものがものです」
やはりそれに尽きた。
「驚くしかありませんでした」
「全くでおじゃる、しかし」
「そこまで大きいとなると」
「是非共と」
「なりますな、では」
山科は笑みになって近衛に返した。
「共に」
「はい、共に」
こうした話をして二人で頷き合う、山科はその話をしてから近衛に杯を差し出した。近衛もそれを受け取って共に飲みだした。
酒を飲みつつそして言う山科だった。
「織田殿、その目指されるものは」
「大きいでおじゃるな」
「ただ天下を見てはおられませぬ」
「それ以上のものを」
「はい」
まさにそれをだというのだ。
「見ておられ動いておられる」
「その通りですな」
「麻呂も色々な人を見てきたでおじゃるが」
ここで山科は言った。
「織田殿程の方は」
「いなかったでおじゃるな」
「はい」
そうだというのだ。
「かつて室町幕府の足利義満公や足利善政公が拝領されましたが」
「あのお二人は無理をされていたでおじゃる」
全ては幕府の権威の為である、衰えていた幕府の権威を何とか再び盛り上がらせようとしていたのだ、しかしそれが裏目に出たのである。
しかしそれがだったのだ。
「結局はどうにもならなかったでおじゃる」
「そうでおじゃるな、お二人は」
「平清盛公や源頼朝公は最初からでおじゃった」
この二人は拝領しようとしなかったのだ、天下を制した二人もだ。
「そうでおじゃるな」
「しかし織田殿はでおじゃる」
近衛は唸る様にして述べた。
「違うでおじゃるな」
「まさに上ろうとされる時で」
しかもだった。
「尚且つ帝への配慮でおじゃる」
「左様、実は麻呂は」
山科は強い声になった、自分でもそれはわかっている。
「若し織田殿がご自身だけを見ておられるのなら」
「そして蘭奢待をご自身だけが見られるならでおじゃるな」
「麻呂はこの話を帝にお話するべきではないと思っていました」
「麻呂もじゃ」
それは近衛もだった、そう考えていたのだ。
「しかし帝にまで献上されるのならば」
「是非共でおじゃる」
「ですな。では」
「このお話帝にしましょうぞ」
公卿の中でも発言力の強い二人が決めた、そしてだった。
この話は帝のお耳にも入った、御所においてそこで近衛と山科、そして他の有力な公卿達から話を聞いてそのうえで仰った。
「織田信長の蘭奢待のことは」
「はい、それですが」
「如何思われますか」
「よいことです」
こう言ったのである。
「非常に」
「ではお許しになられるのですね」
「拝領を」
「はい」
はっきりとしたご返答だった。
「朕からもよしと伝えて下さい」
「畏ま
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