第百二十三話 拝領その二
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「まずは」
「山科殿、そえに」
「近衛殿ですな」
「左様です」
この二人だった。
「それから必ず帝にまでお話は通しましょう」
「帝にもですね」
「そうです」
明智は松井にその通りだと答える。
「あの方にも」
「帝までお話を通さなければ」
「この話は通りませぬ」
そうなるというのだ。
「だからこそです」
「それ故に、ですな」
「それで宜しいでしょうか」
「考えてみればそれもです」
松井は明智の話を聞いてから述べた。」
「当然のことですな」
「はい、朝廷ましてや蘭奢待は皇室のものですし」
「ならば余計に」
「はい、それ故に」
帝にまで話を通さなければならないというのだ、そのことを決めてだった。
織田家は朝廷への働きかけも強めた。その拠点となったのは信行のいる六波羅だが信行は彼等の動きを見て驚きを隠せずに言うのだった。
「朝廷への働きかけ、見事であるが」
「それだけではなく、ですか」
「動くだけではないな」
信行はその六波羅で村井に話していた、その話がだった。
「銭も随分使うのう」
「銭に糸目はつけるな」
村井は信行に答える。
「殿のおおせです」
「兄上のか」
「銭は使うべき時に使うもの」
村井は言う。
「そして今もです」
「それでか。しかs本当に随分と使うのう」
「しかしです」
「それでもか」
「使う銭は戦の時と比べれば」
「少ないのう」
信行も話を受けてすぐにわかった、伊達に政の者ではない。
「それも随分と」
「戦はとかく銭がかかります」
「具足や武具を用意して兵糧もじゃからな」
「とかく銭がかかります」
「しかし今はか」
「はい、確かに公卿の方々に贈りものをし」
それを贈るのが礼儀だ、汚くとも何ともない。
「ことが果たされればお礼もです」
「それも贈ってじゃな」
「絵や書、筆に刀も用意しておりますし」
「茶器も」
「そうしたものは多う用意しています、ですが」
それでもだというのだ。
「戦をすることに比べれば」
「そういえば上洛の時は」
六万の大軍を動かし上洛し多くの国を手に入れて今の織田家の基盤を築いたあの上洛と一連の戦についての話はというと。
「下手をすれば、若し上洛をしくじれば」
「その時はでしたな」
「織田家の銭は綺麗さっぱりなくなっておった」
それどころか借金を多く抱えていたところだった。
「上手く、兄上だからこそ果たし豊かになったがな」
「それでもですな」
「戦は銭がかかる」
とかくだった。
「それが厄介じゃ」
「左様ですな、しかし政は戦と比べれば」
とかく銭がかからないというのだ。
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