第二十七話 教会の赤マントその六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「無能な軍人だったって聞いてますけれど」
「いや、それは違うぞ」
博士は愛実の乃木が無能だったという言葉には即座に、しかも強い口調で否定した。そのうえで言ったのである。
「あの人は無能ではないぞ」
「けれど戦争の指揮で」
「軍人は司令官だけが仕事ではないのじゃ」
博士は愛実にさらに言った。
「作戦指揮や作戦を立てることだけではな」
「そうなんですか?」
「教育もある」
これもだった。
「そして軍規軍律を守らせること」
「日本軍って滅茶苦茶厳しかったんですよね」
「まさに鋼の如きじゃった」
その軍規軍律の厳しさを誇りとしていた、これは陸軍海軍共通だった。
「そして軍人として恥ずべき行い、これはわかると思うが」
「はい、日下部さんとお話していますと」
「そうしたことでは乃木大将は最高じゃった」
軍人として恥ずべき行いは全くしなかったというのだ。
「それが為に水師営の会見もあった」
「何か聞いたことがありますけれで」
「敵将に帯剣での会見を許したな」
歴史に名高い会見だ、敗軍の将にも礼節を忘れなず軍人として寛容な人間性も見せた乃木、そして日本軍の評価はこのことからかなり上がった。
「そうしたことも見てじゃ」
「軍人は考えないといけないんですね」
「うむ、最高の軍人じゃった」
歴史の権威でもある博士の言葉だ。
「しかも教育者としてもじゃ」
「よかったんですか」
「昭和帝の恩師だった」
昭和帝は乃木への敬意を終生忘れなかったという。その教育を受けられた結果のことだ。
「雨でも晴れでも一人で通学してくれとな」
「将来の天皇陛下に言ったんですか」
「そうじゃ」
そうしたというのだ。
「将兵の教育も軍の活動の一つじゃからな」
「皇室の方にそこまでってなると」
「わかるな」
「凄い人だったんですね」
「また言うが軍人は戦うだけが仕事ではない」
このことを履き違えている者も多い、その内容は多岐に渡るのだ。
「自衛隊を見るのじゃ」
「災害救助がメインですよね」
「正直行って」
「むしろそこじゃ」
博士も二人に言う。
「戦争を決めること、軍を行かせること、戦争を終わらせるのは政治家の仕事じゃ」
「軍人はそれに従うだけ」
「そうなるんですね」
「軍人は意見は言える」
軍人も官僚であり専門家として意見は言える、ただそれを言わせない政治家やマスコミもいるにはいるが。
「しかし決めるのはじゃ」
「政治家の人なんですね」
「軍人じゃなくて」
「うむ、まあ政治家が軍事に素人なら話にならんがな」
このケースもよくある、特に日本の左翼政治家では。
「明治の頃はまだ軍人と政治家ははっきり別れておらんかったがな」
「何か難しいですね」
「軍人さんも」
「中々の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ