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lost music
1話
1話 リンネ 1
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いるのは佑介曰く今を時めく歌姫様とやらのりんねである。
  
こちらを一瞥することなくずっと窓の外を見つめており、メロンフロートに刺さったストローを咥えていた。
  
辺りを見渡すも店員、と言っても妙齢のお婆ちゃんが一人カウンターの奥に座っているだけで、他は従業員も客も見当たらない。
  
そして俺はというと佑介に奢ってもらったバーガーを胃に納めている最中である。ちゃんとお婆ちゃんから許可は貰っているが、さすがに長々と食べ続けるつもりはないので少し急ぎながら。
  
全て胃に納める頃には俺の胃は膨れ上がり、今は水一滴も飲みたくはない。
  
腹ごなしとばかりに、俺は未だに窓の外を見つめ続ける少女に声をかけるのだった。
  
「面白いか?りんね……さんよ、ぼーっと外を眺め続けてさ。」
  
俺の言葉を聞いているのかいないのか、うとうととしたようなゆっくりとした動作で首を縦に振った。とりあえず肯定と受け取りつつ、無理やり会話を続ける。
  
「りんねってのは本名なのか?ローマ字読みだから芸名だとは思うんだけど。」
  
人間観察に飽きたのか、俺の話を聞くつもりになったのかりんねはこちらへと視線を移し、ノートの最初のページをこちらへと向けてきた。
  
【風羽凛音】
  
と丁寧ながらも可愛らしい文字で書かれており、よく聞かれるのかそのページは少し汚れていた。
  
「えーっと、かぜはね?かぜばね?」
  
一つ溜息を疲れ、呆れた目でこちらを見つめてくるりんね。あどけなさは残っているものの、整った顔立ちをしており、見つめられるとどきっとする。
 
軽くペンを回した後に名前の横にふりがなを書いていく。ふっと鼻で笑った後にノートをこちらへと向けてきた。
  
【かざばね りんね】
  
と先程よりも丸っこい字で書かれている。たぶんこちらが普段使いの字なのだろう。
  
「ふむ……風羽凛音か。んじゃ凛音って呼ばせてもらうけどいいか?」
  
勝手にすればという感じでひらひらと手を振る凛音。それからいくつか話を振るものの、軽いジェスチャーとノートに書くだけで一切言葉を発することは無かった。
  
(キャラを大事にしてるってことかね……一度声を聞いてみたいんだが。)
  
「あれ?隆明君だ。こんな所で珍しいねー、どうしたの?」
  
鈍いベルの音と共に声が聞こえてきた。それは凛音のものではなく、俺がよく知る女の子の声であった。
  
「おう柚子葉、さっきぶりだな。お前こそよく来るのか?ここ」
  
俺と凛音の机の前に立つ制服を着た女の子。ふわふわとしたウェーブの栗毛と、同年代と比べても目立つそのスタイルが目を引く。少し垂れ目気味の顔も本人の性格とあっており、とても可愛らしい。とこの前
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