1話
1話 リンネ 1
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介、後ろ。」
「後ろがどうしたって?」
俺の指差した方向へと体ごと向き直る佑介は、横断歩道を超えた先にいた存在に気付くと大口を開けて固まってしまった。
長い銀髪を揺らしながら歩く、遠目ながらもテレビで見るよりも小さく、しかし目を引く美しさを持つ少女の姿に俺も思わず見惚れてしまう。
大きなヘッドホンをつけ、パーカーのポケットに両手を突っ込んで目をつむり歩くりんねは、人通りの多い道ながら誰にもぶつかることなく器用に人の波を抜け、やがて姿を消してしまった。
「おいゆうふけ、惚けてる場合しゃないぞ。あれがりんねだりょ?とっとと追いかふぇようぜ。」
「お、おう!急ぐぞ隆明!でもとりあえず今頬張ってるペッパーバーガーを飲みこんでから走れ。むせるぞ。」
「ごふっ。」
お約束とばかりにむせた。しかも注意された瞬間なのでかなり恥ずかしい状況で。
「先に行ってるから落ち着いたら追いかけてこい!」
佑介も人の波に紛れ姿が見えなくなったのを確認すると、俺は近くの壁にもたれてから、袋からお茶を取り出してゆっくりと飲みほした。
数分ほどすると落ち着いたので、佑介を追いかけようと辺りを見渡すも、何処へ走ったか見当もつかない。途方に暮れていると腰の辺りをつつかれたのか妙にこそばゆい。何かと思い視線を下へ下げると、目的の物がそこにいた。
「りんね?!さっき向こうに居たはずなのになんでこっちに」
俺の言葉を遮るようにりんねがノートを開き、何かを書き始めた。用があるなら口で言えばいいのに、まだるっこしいことをしている。書き終えたのか満足そうに頷くと、表情を変えることなく開いた頁をこちらへ向けてきた。そこには
【邪魔】
と大きく書かれている。いきなり表れて邪魔ってどういうことだよ。
俺が困惑していることに気付いたのかもう一度ノートへ書き込みを始めるりんね。先程よりも早く文字を書き終えると今度は俺の横辺りを見つめながらノートを掲げた。
【後ろ】
とまた2文字のみしか書いていなかった。しかし後ろが邪魔?何のことかと振り返ると、俺がもたれていたのは壁ではなくドアのようで、上には喫茶店の文字が書かれていた。高架下に一体化しているタイプのようで、店であること自体気付かなかった。
「えっと、ここに入ろうとしてたのか?悪いな通せんぼしちまって。」
すぐさまそこから退くと、こちらを一瞥することもなくりんねは喫茶店へと入っていった。少し茫然としてしまったが、当初の目的を思い出し俺は慌てて追いかけていった。
……俺はどうしてあそこで追いかけてしまったのだろうかと後悔している。今机を挟んで目の前に座って
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