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lost music
1話
1話 リンネ 1
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スクリーンには歌手の女の子がステージ上で歌っているシーンが流れている。身体と一緒に小さく揺れる長い銀髪はスポットライトを反射してより煌びやかになり、耳全体を覆うヘッドフォンを左手が軽く押さえ、目を瞑った状態でスタンドマイクに歌を聞かせていた。
 
広場にいた人たちも皆足を止め、その歌と光景に酔いしれているが、俺はその歌に違和感を覚えた。
 
「なんでこの歌……歌詞が一切聞こえてこないんだ?」
 
歌の雰囲気や何を伝えたいのかは分かるものの、声は一切聞こえてこない。彼女の口から聞こえてくるのはメロディーのみであった。
 
俺は眼を細めてスクリーンを凝視する。彼女が何者なのか確かめておきたかった。
 
「サインみたいな字で読みづらいな、り、りね」
 
「ローマ字読みでりんねだぞ?隆明」
 
ポン、と肩に手を置かれたので、そちらに視線を移すと俺の待ち人がそこにいた。
 
規制の緩いうちの学校によくいる、髪を茶髪に染めて制服を着崩したチャラそうな男がへらへらと笑いながら。
 
「佑介よ、用事終わってこっちについてたなら連絡くらいくれても」
 
「どうやって?お前携帯持ってないし柚子葉も傍にいないだろうが」
  
そういえばそうだったと思い立ち、俺は照れ隠しとばかりに頭を掻いた。
  
「で、そのりんねとやらはどういうやつなんだ?歌は聞こえてくるが歌詞は一切聞こえてこないんだが」
  
「お前……今を時めく歌姫のリンネを知らないとか人間か?」
  
アイドルの一人を知らない程度で酷い言い草である。しかしファン等にとってはそれくらいの問題だろうと思い、軽く流すことにした。絡まれるのもめんどくさい。

「すまんな、うちにはテレビもラジオも無いんだ。久しぶりにディスプレイとやら  を見たレベルだぞ」
  
「あーそっか、悪い悪い。リンネってのはお前が言った通り歌詞の一切存在しない歌を歌う女の子だ。ある日突然現れた新人だがその歌は人を魅了し、可愛らしい容姿も相まって一気に人気が出て現在に至る」
  
自分のことのように大げさな振りを入れて喋る佑介。辺りを見ると俺たちの会話を聞いているのか何人かが頷いていた。
  
「ふーん……声を聞いた人は誰もいないのか?」
  
「あぁ、無い。だから巷ではmermaid of diva 声を失った歌姫と呼ばれている。ちなみに今日の用事もリンネのCDを買いに来ただけだ」
  
そういってカバンの中から袋に入ったCDを取り出し、自慢するように俺に見せてくる。しかしちょっと待て。
  
「つまり今日の用事は終わったってことだよな?何しに来たんだ俺は」
  
「いやー、とある噂を耳にしてさ。お前にも手伝ってもらおうかと思って」
  
「噂?その類
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