追想〜武者の古傷〜
[8]前話 前書き [1]後書き [2]次話
彼女と(ALO内で)別れた後、俺は一人の、彼女と同じスムーズ人の、そしてはもうどこにもいない恩人のことを思い出していた。
あの地獄が始まってから一年程たった頃の事だ。ギルドの調整やその他諸々もうまく行き、攻略組ギルドとして軌道に乗り始めた矢先、迷宮区で数人のパーティと一緒になった。人数が半端で、チーム構成にも不安があると言うことで一緒に攻略をしたのだ。その三人あまりのパーティのリーダーが、ターレスさんだった。
「だらぁ!」
ターレスさんは巨大な戦斧を軽々と振り回しモンスターを蹴散らしつつも、滑らかに動き距離を置く、回避すると言った動作をやってのけた。彼こそ、俺がスムーズ人をスムーズ人と呼ぶ切っ掛けを作った人だった。
「やっぱいい動きしてるなぁあんたら。俺達をあんたらのギルドに入れてくれないか?」
そうして増えた俺達の仲間。彼らと共に闘う事が出来たのは、たった二週間だった。
その日、季節と規則にうるさいカーディナルが珍しく、真夏の猛暑日に雨を降らせた日だった。
「くっそ、抜けられない・・・・・・・!」
俺達は自分達のレベルに合ったダンジョンでひとしきり狩りをした後、街へ帰る途中に運悪くMPKに引っ掛かってしまった。その数、優に五十を越える。たった七人しかいない俺達にとって、それはどんなに頑張っても覆せない絶望的な数字だった。
「どうする!?転移結晶が足りねぇよ!」
「俺が支える!お前らは先に主街区に行って、転移結晶を届けてくれ!」
「・・・・・・・死なないで下さいよ、ターレスさん」
「なぁに、こんなクソッタレなデスゲームだ、こんなことだってあるさ」
俺達は先に転移して、ターレスさんへ転移結晶を届けようとダンジョンへ飛んでいった。が、
「ターレス、さん・・・・・・・」
そこには、倒されたモンスターがドロップしたアイテムと、ターレスさんがドロップしたと思われる大戦斧が転がっているだけだった。
[8]前話 前書き [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ