act-1"the-world"
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に沿ってページを開いた。昼休みの事件の始まりとなった「伏せろ―!」の台詞。今度はそんな必要もなく、彼はその続きを読み進める。
「ったくこういうことは早く教えろってんだよなぁ」一方のケンジは、他の生徒たちが各々の方法で時間を潰している中、一人不満げに机に突っ伏していた。彼にとっては教室でこうして拘束されていること事態が苦痛であり、できることならば昼休みの時点でさっさとばっくれる―詰まるところ無断早退したいところだったのだ。もし学年主任からのメッセージがもっと早く届いていれば、せめて予鈴の鳴る前に届いていれば、早々に学校を抜け出していたというのに。
「WRFの連中も地下鉄と言わずもっと拠点を狙うって予告すりゃあ良いのによぉ。例えば…それこそ学校とかよ。…なぁユウト」
「馬鹿なこと言うなよ。……いくらサボりたいからって…学校が狙われたら命がないじゃないか」
ケンジの愚痴にユウトは振り返ることなく答える。単なる愚痴なら良い物の、不謹慎なことこの上ない。もし本当に学校が爆破の標的となったら、学校をサボるとか、そう言う次元の話ではなくなってしまう。だが彼は一切悪びれる様子もなく、「そうだけどよぉ」と答えながらヘッドロックを仕掛けてきた。もちろん本気ではない、戯れの力加減でユウトの首を締め上げ言葉を続ける。
「連中、爆破予告はする割りに一回も実行したことねぇだろ?実際に連中の工作員が捕まったのも精々離島…都心部で連中が行動を起こしたことなんて一度もありゃしねぇ。この間の輸送船に潜入した工作員だって船内で捕まったわけだしな」
「……爆破予告は全部ブラフで、本当はそんなつもりはない…ってこと?」
「あぁそうさ!」ケンジはヘッドロックを解くと、今度は肩を組むようにしてユウトを引き寄せ、まるで密談でもするような小声で続けた。
「これだけ予告をしておきながら行動を起こさなければお偉方も油断し始める。そこで本命をドンッ!だ。これは連中の作戦なんだよ!」
また始まった。ユウトは熱を帯び始めるケンジの熱論にため息を漏らす。
ケンジは根っからの陰謀論者であり、ニュースを始めとしたマスメディアの情報を当てにせず、何処をソースとしたかも分からない如何にも怪しげで荒唐無稽な論説を信じる傾向が強かった。大きな事件が起こる度にユウトを相手として独自の陰謀論を声高に演説し、ユウトのみならずその様子を傍目にする生徒たちの気力を奪っていった。
そして今回もその演説が始まったわけであるが、今日ばかりはそれを相手にしてやるほどの余裕がユウトにはなかった。昼休みの一件以降、とにかく今は気持ちを落ち着けたい。
「分かったってば…その話はあとで聞くから」
ユウトはケンジの腕を振りほどき、机と向き合って小説を開く。ふと窓越しの空に視線をやると、三
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