act-1"the-world"
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なときに……?」
「……それはいずれ分かることよ。だってあなたは…ユウトくんを誰よりも知っているんだから」
キョウカは最後に優しく微笑み、コーヒーを飲み終えたマグカップを備え付けられたシンクへと片付けた。「そろそろ午後の授業が始まるから、飲み終わったら教室に戻りなさい」彼女の言葉にミノリはハッと手のひらの中のマグカップを思い返し、すっかり適温になったコーヒーを口に含む。
―本当に手を貸すとき……
キョウカの言葉を反芻しながら、ミノリは思い悩む。本当に手を貸すときはどんなときなのか。どんな状況なのか。いつなのか。まったく見当がつかない。昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。校庭の生徒たちが昇降口へと向かい、廊下からも慌ただしく行き交う生徒たちの足音が聞こえる。だが、今の彼女の耳にはそれすらも届かない。少なくともこれだけは言える―午後の授業内容は、頭に入りそうにない。
予鈴がちょうど鳴り終えたのと同時に教室にたどり着いたユウトはドアをくぐるや否や大きくため息をついた。―散々な昼休みだった。まさかコウスケに嫌がらせを受けるとは思わなかったし、そこにミノリが現れるとも思わなかった。ただ読書をしようとしていただけだというのに。次からはもっと落ち着いた―より正確には嫌がらせを受けない―場所で読むようにすべきか。そもそも読書自体控えるべきか。ユウトは再度大きくため息をつくと、ショルダーバッグを机の上に放り出し、ぐったりと席に腰を下ろした。―その刹那。
「イ゛ッ!?」
電流。そう言うのが適切だろう。バチッと言う音と共に首筋にちくりと針で刺すような痛みが走り、ユウトは首筋を撫でながら背後に振り向いた。そこには無邪気な笑みを浮かべる男がいた。手にライターほどの聞きを手にした男が。
「ケンジッ…今度はなんだよぉ?」
「へっへっへェ、スゲーだろ?お手製スタンガンだぜ。…威力は大分下げてるけどな」
シンジョウ ケンジは手にした手製スタンガンのスイッチを入れると先端の電極の間で光る火花をユウトに見せつける。高校入学以来の友人であり、ユウトが“友達”と呼べる数少ない生徒。人なつっこく気立てが良い性格でクラスのムードメーカー。何処からか仕入れた知識と何処にでも売っているような雑品で今回のようにいたずらグッズを作り上げては女子生徒たちにちょっかいを出し、教師の大目玉を食らっていた。だが彼は、コウスケやその他の自らの支配欲を満たすためにそんなことをしているわけではなく、友愛の気持ちを持って、いたずらに興じている。それを誰もが理解し、ユウトもその例外ではなかった。だから今のようなイタズラをされても許すことができる。―痛いのは事実であるが。
「っつーかお前どうしたよそれ?また3年の脳筋にやられたのか?」
ケンジが手製ス
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