act-1"the-world"
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約するとその内容は「偉そうにしてるけど実際内弁慶で自分より強い相手には媚びへつらう最低な男」と言ったものだ。大分誇張された表現もあるが、本筋はその通りであるし、ユウトもキョウカも部分的にではあるがその言葉に納得している。
だが、いつまでも彼女の愚痴を聞いている余裕はユウトにはなかった。一刻も早く、ここを離れたい。―より正確には、ミノリから離れたい。ユウトはミノリの愚痴が小休止を迎えたのを見計らうとショルダーバッグを手に立ち上がった。
「ありがとうございます、キョウカ先生。ミノリ…姉ちゃんも……それじゃあ、これで」
「ちょっと、ユウト―!」ミノリの制止する声も聞き入れず、ユウトは逃げ去るようにして保健室をあとにした。ピシャリとドアが閉められ、それを見届けたミノリは不満げに先ほどまでユウトの座っていた丸椅子に腰を下ろす。
「……不満そうね、ミノリちゃん」
キョウカはまたいつもの優しげな笑みを浮かべると、備品棚から個人用のマグカップを二つ取り出し、卓上のコーヒーメーカーからコーヒーを注ぎ、その一つをミノリに差し出す。彼女はそれを受け取ると、手のひらでマグカップを包み、不満げに答えた。
「当然ですよ!ドウミョウジもムカつきますけど、ユウトだってユウトです!だって…ただ本を読んでただけなんですよ!?なにもしてません…それなのにあんなの……」
「……優しいのね、ミノリちゃん。…けど私、一つだけ気になることがあるんだけど…聞いても良いかしら」
「?……はい…なんでしょうか」
キョウカは一口、コーヒーを口に含むと、それを飲み干してからミノリの目を見据えて問うた。
「……どうしてユウトくんとドウミョウジくんのトラブルにミノリちゃんが割り込んだの?」
「それは―」キョウカの問いにミノリは言い淀み、視線を落とす。吸い込まれるような黒いコーヒーの水面に映った自分自身に。
些細なことだった。昼休み、友人らと教室で談笑していた際にたまたま視界の隅にいたユウト。彼女は友人らとの語らいをおろそかにするでもなく、自然と読書にふけるユウトに注目していた。そんなときだった。コートでサッカーに興じていたドウミョウジとその一行が突然ゲームを止め、何かを企みはじめたのは。その頃には、彼女は既に友人らの語らいを半ば無視し、ドウミョウジの企みを気にするばかりだった。ドウミョウジの指さすその先には他でもない、ユウトがいた。そして彼はボールを足下に置くと、試合のPKでも見せたことの無いような華麗なフォームでボールを蹴り飛ばし、綺麗な弧を描くボールは非情にもユウトのこめかみに叩き付けられたのだ。そこで彼女の怒りは沸点に達した。頭の奥で何かがプツリと音を立てて切れたのを感じると、自らを心配する友人らを無視し、一目散に階段を駆け下り、校庭へと向かっ
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