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Sleeping Rage
act-1"the-world"
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本の飛行機雲が青空に描かれている。先ほど彼が見送ったM.O.L.L.の編隊が描いたものである。

「……戦争、か」

 ユウトはM.O.L.L.の描く飛行機雲を眺めながらぼんやりと呟く。
 彼ら学生の世代にとってはごく当たり前の光景であったが、彼らの祖父母の代の人々は口を揃えて「昔はこんな物騒ではなかった」と答える。そして彼らは必ずこう続ける―「太平洋一帯の国々が統一されてからいつもこうだ」と。
 「環太平洋統一連合」と呼ばれる国際組織が設立されたのはおよそ四半世紀ほど前の出来事である。当時の列強諸国の一部は自国の繁栄と他国との共栄、そして平和と安全を維持するために、それまでの国家の枠組みを超えた、より巨大な統制機関を必要とした。それが環太平洋統一連合である。当時はその名が示すとおり環太平洋地域に属する国々を中心として設立されたものであり、その規模は徐々に拡大、今や環太平洋地域外の国々も加盟していた。連合諸国は政治的な意味合いでの国境が廃され、共栄と平和に向け大きな一歩を踏むことに成功した。
 だが、それで世界平和が実現したわけではない。
 南アメリカ、アフリカを中心とする非加盟国と連合諸国との間に摩擦が生じ始めたのである。そもそも非加盟諸国が連合への加盟を拒否した理由の一つが天然資源にあった。南アメリカは世界有数の鉱物資源国であり、アフリカもまた、それに匹敵する天然資源を有していた。連合へと加盟することでそれらが世界に分散配分されることを彼らは拒んだのである。
 当初こそ会談による連合への加盟を求めた連合諸国であったが、非加盟国が頑なに連合の傘下に下ることを良しとしないことを知るや、その方法は少しずつ、だが確実に強硬な形へとシフトしていく。入国の制限、国内企業の撤退、輸出入の停止―それは明白な経済制裁であり、非加盟諸国はこの処遇に反発、連合諸国との間には深い軋轢が生じることとなった。非加盟諸国の国内は大きく荒れ、政権はその怒りの矛先を避けんばかりに公の場で連合を非難、打倒連合を謳う世論は日に日に増す一方であった。
 そうして発生したのが8年前の戦争―「環太平洋戦争」である。非加盟諸国と一部の連合加盟国との間で引き起こされた世界戦争は両陣営の痛み分けで終わり、5年物間続いた戦いは両者の合意の下で停戦、一応の決着はついたかに見えた。しかし、その停戦を良しとしない一部将校がゲリラ化し、「WRF―World's Resistance Front―」を名乗り連合諸国に対する無差別なテロ行為を実行したのである。WRFによる無差別テロは瞬く間に世界へと拡散し、実態の見えない彼らの攻撃に連合は為す術もなく、終戦から8年の時を経ても尚、WRFとの終わりのない戦いを続けていた。
 5年間の戦争と8年間の対テロ戦争。足かけ13年にわたる戦いは、学生である彼
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