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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
常識の埒外に生きる少女
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「シロウさん。シロウさんって趣味とかないんですか?」

そんな質問が早苗の口から放たれた。

「いきなり何だね」

「いえですね。こうして同じ屋根の下で暮らすことになって結構な日数が経っているのに、私シロウさんのこと何も知らないんだなって思って」

目元だけを俯かせ、少しだけ悲しげに語る。

「だから―――知りたいんです。些細なことかもしれないけれど、そんなことさえ知らないようではいけないって思ったから」

そこから一転して、強い眼差しが私を射貫く。
それは、普段の東風谷早苗という少女からは想像も出来ないくらい、頑なで芯の通ったもの。
一歩引き相手を立てるということを当たり前のようにこなしていたから、勘違いをしていたが、彼女とて人の子。
私という本来在る筈のない異分子によって好奇心が活性化されたのか。
相手を立てることに慣れた彼女だからこそ、相手を知りたいと考えるのが当然なのか。
―――いや、どうしてこうも捻くれた解釈ばかりしてしまうんだ。
私が莫迦みたいに幻想郷の探索に精を出し、おおよそ息抜きや娯楽に現を抜かすようなことをしていないから、心配してくれているのだろう。

「趣味は家事全般だ。前にも宴会の片付けをしたと思うが、慣れていたのはそういうことだ。君にとっては単に技術的な意味合いしかないと思っていたのかもしれないが、ちゃんと趣味として機能しているよ」

「そういえばそんなことありましたね。思い返せば、酷く遠い昔の話に感じます。それだけ貴方と居た時間が充実していたんだと思います」

目を閉じたまま、出逢いの時を思い出しているのだろうか。
静かにただそうしているだけにも関わらず、まるで名だたる芸術家の作品を見ているような気分になる。
実年齢から考えるとそこそこ幼い顔立ちだが、それ以外はそれ以上に大人びている。
その矛盾した体躯が、余計に創作ならではの非現実的な光景を連想させているのかもしれない。

「………そうだな」

私にとっても、幻想郷に訪れてからの毎日はとても充実していた。
これが魔術やら聖杯といった非現実的な要素を知らない状態だったならば、この光景も新鮮に映っていたのだろう。
まぁ、それはそれでここまで自由に動くことは出来なかっただろうし、一長一短か。

「―――そうだ!私もシロウさんに色々知ってもらいたいですし、今日はお話して過ごしましょう!」

早苗が両手を叩いてそう提案してくる。
その表情から窺い知るに、どうもこの発現は予定調和臭い。
そこまでして私を知りたいと思ってくれるのは素直に嬉しく思う。
以前までは直ぐに出て行こうと、必要以上の干渉はしないよう意識していたつもりだったのだが………今では彼女の提案も悪くないと思っている自分がいる。
そもそもここから出て行っ
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