第180話
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俺が囮になるから、お前達はその隙に教皇庁宮殿に向かえ。」
「でも、そうなった恭介が・・・」
「今は一刻を争う。
この中でなら俺が一番向いている。
なに、適当に引き付けて俺も教皇庁宮殿に向かう。」
上条と五和はしばしの沈黙の後、コクンと頷いた。
この状況だ、言い争っている場合ではない。
「麻生さんが囮役をしても、私達が暴動に見つかれば意味ないのでは?」
「その策は既にできている。
お前達から髪の毛を一本ずつもらうぞ。」
了承を得ず、両手を使い上条と五和から髪の毛を一本ずつ抜き取る。
チクリとした痛みを感じながら、麻生の行動に首を傾げる。
「暴動が先回りしているのは、魔術師の監視の目があるからだ。」
ふと、麻生は空を見上げる。
視線を追うが空には何も見えない。
だが、麻生にはしっかりと捉えていた。
自分達を監視する使い魔の姿を。
片手で印を結び、呪文を唱える。
「我らを見るは真の眼。」
すると、麻生を中心に地面に朱いサークルが半径三〇〇メートルに渡って一瞬で広がる。
瞬間、辺りにガラスの割れる音が響き渡る。
周りには爆発音や悲鳴などが聞こえるのに、どの音よりも耳に響いた。
能力で絹の糸を創り。
「壁に寄れ。」
麻生の指示に従い、壁に張り付くように二人は立つ。
絹の糸で壁を底辺にし、半円を描きその中に二人を囲う。
次に創ったのは。
「本?」
上条は場違いにも思える本を作った事に疑問を感じる。
タイトルは『裸の王様』と書かれている。
『裸の王様』
童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが書いた童話の一つ。
本に魔力を注ぐとひとりでに本は開かれ、風に吹かれるようにページがめくれていく。
「これは魔法の裁縫だ。
知恵ある者には無価値に。
知恵なき者には宝石に映る。」
言葉に呼応して、絹の人が一瞬だけ光ると絹の糸が消えてなくなった。
「透明の魔術をかけた。
本来なら人に賭ける魔術だが、当麻の右手があるから範囲系に切り替えた。
絹糸の中にいる間は、外からお前達の姿は見えない。
暴動が去ったら、教皇庁宮殿に向かえ。」
二人から抜き取った髪の毛を掌に乗せる。
「たった髪一本。
されど、髪は現身。」
掌にあった髪は宙に浮くと、うっすらと上条と五和の姿が映ってくる。
それは鮮明にはっきりと浮かび上がり、最後には上条と五和がそこに立っていた。
だが、瞳に色はなく、呆然と突っ立ているだけ。
「ただの人形だが、囮には充分だ。」
確かに瞳に色はないが、暴動で頭に血が上っている彼らからすれば、些細な違いなぞ分かる筈がない。
二人を腰に手を回して持ち上げる。
「んじゃ、教皇庁宮殿で。
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